6月、わたしは毎週末に出張があり、なかなか純ちゃんのお見舞いに行けなかった。
年に何度も海外出張をしていた彼女は、国内とはいえ、わたしの出張をうらやましがった。
第5クールは、副作用が厳しかったらしい。
通常3日と言われているのに、蓄積のせいか、6日経っても抜けなかった。


『ここ3夜、夜中のナースコールでどんどん新しい強い薬を服用しているよ。
ナゼアやオキノームといって、がん患者には定番らしい。でもって、その副作用がまたありまして。
第3クール以降、腫瘍の縮小化は見られない。
でもその場合、まだ効果があると判断されるらしい。
だからこのまま第6クールにいくと思う。問題はその後だよね。
新薬にいくのか、違う抗がん剤にいくのか。』


第5クールの抗がん剤投与後、主治医とまったく話ができていなかった。
新たな症状も出ていた。今までと違う薬も服用していた。
不安になって当然。
医師が顔を出さなければ、不安はやがて不信感に変わっても不思議はない。
患者はたくさんいる。彼女ひとりではない。
でも・・・。
じゃあ、他の患者さんのところに、果たして顔を出しているのかな。