『そんなに悩まないで! 
そうすぐには逝かないから。

髪をかきあげるたびにパラパラ抜け落ち始めた。
正直、ビビる。』


本で読んだことが、まるで台本のように事態は進行していた。

この日、髪があるうちに母親に顔を見せておかないと、と彼女は自宅へ戻っていた。
わたしは、純ちゃんのお父さんにお線香を上げ、リビングへ入ると、おばさんが純ちゃんにカメラを向けてシャッターを切っていた。
「いっぱい撮ってよ」と注文をつけている彼女。
何をしているのと尋ねると、
「遺影用の撮影。明日には完全にハゲちゃうから、今日が最後のチャンスなの」
と笑いながら、二人は撮影を続けた。

・・・なんて母娘だろう。まったく、、、適わないや。
わたしが腹をくくったのはこのときだった。彼女がどんな決断をしようと支持する。
この1ヶ月間、止まらなかった涙をふき、笑っていようと決めた。


翌々日、純ちゃんから第2クールを始めた、と連絡があった。