警官が階段の上部で倒れている姑を見つけた。

 

慌ただしくなる室内。

 

警官が本部へ応援を要請している。もう一人の警官は119番に連絡して救急隊員に対応を聞いてる。心臓マッサージかAEDをするように指示があったようだが呼吸しておらず意識がないと言っていた。

 

死が発する陰気が家中に充満している。

 

怖気づいて階段に近づけずに一階の和室で立っているしかできなかった。

「とりあえず弟に連絡しないと」主人がスマホを取り出して連絡先を探しだした。

 

義弟は義実家と目と鼻の先に住んでいる。

長男が近くに住んでるいるから好きな土地に住めたのに、結婚する際に

 「遠くにいくと母が寂しくなるから」

と言って長男一家より近くに家を買った。次男大好きの姑は嬉しかっただろう。頻繁に義弟の家に行っていたようだ。

そんなある日、姑が近所とトラブルを起こした。猫嫌いの姑が隣家の飼い猫を殺したと言いがかりつけてきたのに反論したのが発端らしく、警察を巻き込む騒動になり義弟が姑に協力したことがあった。すべて姑から聞いたことなので偏った話になっている部分もあると思われる。トラブルがおさまり、ほどなくして義弟夫婦は姑が大嫌いな猫を飼い始めた。子供に恵まれなかった義弟夫婦は、猫を可愛がっているようで猫は増えて今は3匹飼っている。

 

弟の電話番号を探すのが面倒になった主人が家に行って呼んで来いと言うので夜の路地を歩いていると正面から大きな男が小走りでやってきた。男は義弟だった。

 「兄貴から電話もらった。」

 

警官二人が慌ただしく動く中、和室で主人が待っていた。

主人が倒れている場所を教えると、弟は階段を上がって行った。

遠くでサイレンの音が聞こえ始める。

すでに亡くなっているのに救急車に乗せる必要があるのか?

病院で死因を特定するのだろうか?などと考えているとサイレンの音がハッキリ聞こえだした。やはりうちに向かっているようだ。

 

警官が二人増えて四人になった。近所の交番から来たのだろうか。

 「今から本部の刑事と鑑識、そして救急車が来ます。」年長の警官が言う。

 

義弟嫁がやってくる。「お義母さんは?」弟に促されて階段のほうへ行くと目を赤くして和室に戻ってきた。

 

到着を待っている間、エンディングノートを書いているから、もしもの時はそれを読んでほしいと姑から頼まれていたことを思いだし、2階の義母の机付近を義弟夫婦に探してもらうとすぐに見つかった。

 

葬儀委員長と金銭管理は長男の主人に任せること、銀行口座のこと保険証券の内容その分ける割合、葬儀内容と埋葬場所も書いていた。

 

警察本部と救急車はほぼ同時に到着した。

本部から刑事一人と鑑識官二人がやって来たので義弟夫婦と四人で刑事の聴取に応じた。刑事は中年の男性で、発見時の様子、四人の関係、家族構成、最後に会った日、本人の持病、現金、通帳および保険証券など貴重品が無くなっていないか、部屋を物色された跡がないかを聴かれたが、発見したのが警官なので発見時の報告は警官からしてもらった。刑事に指示されて義弟夫婦が財布と通帳、保険証券を急いで探す。

 

聴取を受けている間、鑑識が遺体と家中の写真を撮っている。

救急隊員の対応は警官がやってくれているが、何を話しているか内容がよく聞き取れない。現場を見た救急隊員が「我々は引き揚げます」と言ったのだけは聞こえた。

 

病院へ連れて行ってもらえないのだろうか

だったら遺体はどうやって運ぶのだろう

 

暗い気持ちでこの先の段取りを考えていると・・・

 

 

 

ドドドドドドドドドン!ダダン!!!!!

 

 

階段から大きな物が転がり落ちる音が家の中に響いた。