本屋をウロウロするのが好きです。

ジャンルを問わず、背表紙を眺めながら面白そうな物はないか見て回る。


今日もまた、1時間ほど早めに駅に行き、思う存分、店内をぐるぐる。

と、目に付いたのは「蛇にピアス」。

昔、二十歳の若手が芥川賞受賞と騒がれた作品。

当時は世間の盛り上がりにむしろ引いてしまって、 読む気にならなかったけど、もう20年くらいたつのかな?

映画化もされて、さらに話題になってたっけ。蜷川監督だったか??

興味ないと言う割には良く覚えてるな。ホントは読みたかったのかも。


今頃ようやく「読んでみよう」と思い手に取る。



金原ひとみの「蛇にピアス」
『「スプリットタンって知ってる?」そう言って、男は蛇のように二つに割れた舌をだした。』
出だしは有名だ。読んでない私でも知ってる。
スプリットタンは、舌に穴を空けて徐々に広げてから、最後に先を切るらしい。へぇ~~ である。
だから、蛇andピアスなのか?

冒頭、スプリットタンに魅せられたルイが、舌に14Gの穴を空けるまでの流れが一気に描かれる。痛々しい。
痛みと流れ出る血が、生きているという実感であり喜びなのだろう。読んでいるこっちは、ただただ痛々しく不快で、軽い吐き気を催しながら読み進める。
ルイ、、退廃的で行動が刹那的だ。が、その割には博学、と言うか頭がいい。一方、アマは純粋過ぎる。
後々、アマは未成年と分かり少し合点が行く。と同時に、ルイも未成年?!と分かり、軽い目眩を感じた。
こうなるには一体、どう生きてきたのか?むしろそっちが知りたい。

そしてアマが事件を起こす。ルイの動揺。シバとの関係。龍と麒麟の刺青。
 無機質な空気と痛々しい情景。ルイの無気力と激しい感情の波。アマを無くして、初めて気が付く自身の気持ち。

一気に読破して残ったのは、ザワザワした気分と乾いた悲しみ、そしてやるせなさ。行き場のない思い。
しかし、もう一回読み返してみるとルイの気持ちの変化が見えてくる。
希望も愛情も無い、人生に光など無かった彼女が、少なくともアマへの愛情があったことに気が付いているじゃないか。
 題名が、麒麟でも龍でもなく「蛇」であって、刺青でなく「ピアス」であるのは、シバでなくアマだったからか。
関係ないか? (^^;)

作品全体を覆う重苦しい雰囲気。何か見てはいけない世界のような。が、しかし若者はそれぞれにもがき、生きる意味や生きている証を、まるで散らばった欠片をさがし、拾い集めているみたいだ。失うことを恐れるルイ。

さてさて、
果たして、アマを殺したのはシバだったのか?
ルイとシバにハッピーエンドは訪れるのか?
ルイ風に言えば、、

そんなのどうでもいい。
そんなの関係ねぇだろ。