産まれ出でて
人間という顔を持ち
名を得て
一個の「ワタクシ」が出来上がる

「ママ」と「まんま」は生きる術
ニコニコ笑うのも生きる術


黄色い帽子の幼児が
はないちもんめで
「あの子が欲しい」などと言い
「相談する」とは頷くことだと体得してしまったのも
ままごとをして「アナタご飯にする?」と
腕組みしながら聞くのもまた
自我の柔らかな芽生えだ

「生理的嫌悪感」などと
難しい漢字は読めなくとも
「いけ好かない」という気持ちは
とうの昔から知っていた

キミは恋をしただろう?
キミはまた
失望もしただろう
親友という小気味の良い響きに
みんなで漂い流れていた
青春という時代

娘から女
女から妻になり
妻から母へと
いくつもの顔を得る度に
幸せの裏側に塗り重ねた
厚い白粉の愛想笑い

自分でついた嘘が
そこら中に散らばっていって
もうすっかり
手に負えなくなってしまったと
途方に暮れた時
ふと
重い仮面を1つ
また1つと外してみれば
言葉なんか知らなかった幼い頃の
笑顔と涙
 
ああ
まずは人間であったと
今更ながら
思い出している夜