〝春風で揺れる花 手を振る君に見えた〟

 『忘れられないの』サカナクション

 

春は新しい日々に向かっていく、新しい出会いもある季節ではありますが、お別れの季節でもあります。卒業や就職、転勤や配置換えなど理由は様々。期待と不安に胸を膨らませつつ、寒さと暖かさを繰り返して春は訪れます。日本語で〝春〟と発音しているだけで、大きく息を吸いだして〝は〟口をすぼめて〝る〟=強い風が吹いて当たっていることを意味しているといいます。

 

桜の花はいつ開花するのか、と連日のようにニュースで取り上げられます。日本人は桜が大好き。それはただキレイだね可愛いねというだけでなく、冬の間小さな蕾にエネルギーを蓄え、自分が咲く時季になると周りのみんなと一斉に花を開かせる。咲いたね嬉しいねと眺めているとあっという間に風に吹かれて舞い散ってしまう。その儚さにどことなく出会いと別れを繰り返す人生観や無常観を重ねて見つめているのではないか。そんなふうに感じます。今年の桜は今年限り。一期一会なのです。

 

古来日本で〝春の花〟といえば「梅」のことを指していました。万葉集では梅の歌が多く歌われています。菅原道真は『雪月花』として「雪の積もる月明りの夜に梅の花は輝く星のようだ」と梅の花を愛でています。やがて時代の流れの中で、日本に桜が根付いて増えていくと桜の花が好まれるようになっていくのですが、ソメイヨシノが主流となるのはここ150年程のことで、以前は「桜」といえば「山桜」のことでした。日本一の桜の名所である奈良県吉野山もそのほとんどが山桜。当時の人は、山の上で一斉に花を咲かせるその様子を〝山笑う〟と表現しました。「笑」という漢字は「咲」という漢字と同じ意味。昔から日本人は花が咲くと笑顔になる民族なのです。♪梅は~咲いたか~桜は~まだかいな~などと大声で歌っているおじさんがいても温かい目で見守って下さい。

 

そんな花と香りに包まれる春は別れの季節でもあります。だからなんか切ない。胸がキュッとなります。少しずつ成長を重ね、少しずつ経験を重ねて大人になっていく過程で、たくさんの別れも積んでいく季節なのです。あの時この時あの場所この場所、色々なとこで「バイバイ」と手を振ってさよならした人達。そのほとんどの人達とお別れしたまま会うこともなく日々の生活に追われています。みんな元気だろうか。春の風に揺れる花を見つめて、そんなことを想っています。

大切に想っていた仲間達。暖かい風に包まれて幸せあれと願わずにいられません。

 

また〝春〟という言葉には〝根を張る〟の意味も含まれているといいます。これからの季節に向けて植物が根を張っていく時季なのです。我々も命の根を張っていけと教えてくれているような気がします。

しっかり命の根を張って、空へ向かって背筋を伸ばして、いつかまた咲く時季、出会える時に備えて蕾にエネルギーを溜めておきましょう。

きっと素敵な笑顔でまた会えるその日まで。