先日ご近所の檀家さんでみんなに〝はっちゃん〟と呼ばれているお婆さんが亡くなりました。はっちゃんは義理堅くてとても丁寧な人。周りに目を配り自分を先にしない人でした。

 

いつもお寺のことを気にかけてくれました。散歩がてらお寺にお参りに来て、草が生えているのを見ると、頼んでいなくても自発的に草取りに来てくれました。毎年初夏の頃になると、鎌とざる籠と草刈り機を持ってお寺の周りを草取り&草刈りを2~3日かけて綺麗にしてくれていました。境内は結構広いので大変です。本当に有難いことでした。ここ数年は施設に入所していたので顔を見ることも少なくなっていました。たくさんの孫達にかこまれてみんなで送り出しました。本当にお世話になりました。

 

3月頃「今年は雪がたくさん降ったから草が生えなくていいねぇ」などと言いながら境内を眺めていましたが、4月に入ったらあれよあれよという間に草が生えてきました。ひと雨ふるたびに〝ボワッ!〟という感じで生えていきます。気がつけば境内は緑色になっているじゃありませんか。なんてことだ。誰かが草取りをしなければ。はっちゃんもいない。近所の檀家さん達も高齢化で足が痛い腰が痛いと言ってるので無理強いは出来ない。どう考えても僕がやるんだろうな。はいはいわかりましたよ、と毎日草取りをしています。とはいえ、根を詰めてやるとくたびれてしまいます。自慢じゃないが体力には自信がありません。毎日一時間と決めて少しずつ草取りをするようにしています。

 

草取りをはじめて最初のうちは「終わったらアレをやろう」「アレもやらなくちゃ」「晩ご飯は何食べよう」と色々なことを考えながら「はっちゃん草が生えたよ~」などとひとり言を呟きながら作業を始めますが、しばらくするといつの間にか草を取ることだけに集中して何も考えなくなります。草と対話しているような気にもなります。あるのは目の前の草と自分だけ。一心に向かい合っていると、そのうちに周りの音だけが耳に入ってくるようになります。草と向かい合い集中していても音だけは鮮明に聞こえてくるようになるのです。どこか〝禅の心〟に通じるものがあります。カエルの鳴く声。蜂の飛ぶ音。池の鯉が跳ねる音。睡蓮鉢の金魚が口をパクパクさせる音。風の音。草木が揺れる音。遠くで誰かが話す声。7キロ先の踏切の音。鉄橋を渡る列車の音…普段気にしていない音がたくさん飛び込んでくるのです。

 

鳥の鳴く声もたくさん聞こえます。春先はウグイスが鳴く練習(?)をしている声が響きます。ホーホケ?ホケ?ホケケ?と聞こえてくると「頑張れよ」と応援したくなります。「ツーツピ・ツーツピ・ツーツピツー」と鳴いているのはヤマガラ。その他にもスズメ、セキレイ、山バト、イソヒヨドリ、ヒバリ、ツバメ、ホトトギス、トンビ等なんとたくさんの鳥たちに囲まれて暮らしていたのかと気づかされます。いまはインターネットで野鳥の声をすぐ調べることが出来ます。えらいもんで草取りばかりしていたら野鳥に詳しいお坊さんになってしまいました。

 

特にこの時期境内に鳴き声が響いているのがホトトギス。裏山から〝キョキョキョキョキョッ〟と〝特許許可局〟みたいな鳴き声を連呼しています。「目に青葉 山ホトトギス 初ガツオ」とはよくいったもので、青葉が目に鮮やかになる頃ホトトギスの声がするのです。よくよく聞いてみるとウグイスの声がした後追いかけるようにホトトギスの声がします。どうやらこの鳥、ウグイスの巣に托卵して子育てをさせるようです。先にウグイスが到来して、巣作りを始める頃合いを見計らってホトトギスもやって来るとのこと。懸命に鳴いているのは、てっきり僕に話しかけているのかと思って返事をしていましたが関係ないようです。自然の摂理かもしれませんが、鳥の世界も大変だ。やっぱりウグイス頑張れ。僕も頑張る。

 

たくさんの生命と一緒に、この時間をこの場所でこの地球に支えられて生きているのだと草取りをしながら実感しています。素晴らしい体験です。こんな素晴らしい体験を僕一人でするのはもったいない。弥勒寺の境内にはまだまだたくさん草が生えております。いつでも門戸は開いております。是非お越しになって草取りをしながら〝禅の心〟を体感して、たくさんの生命と自分の存在を確認して下さい。なんでしたら軍手も無料でお貸しします。遠慮はいりません。ホントですよ。