盆の棚経のこと。アホみたいにくそ暑い中、おろおろ歩いたり原付で風を巻き上げたりしながら檀家さんの家を拝んでまわりました。夕方近くになってひと区切り終わったので今日はここまで。さあお寺に戻ろうと思いましたが、ん?よく考えたらあの家一軒拝み忘れてるぞ…今日行く約束になってるから行かないとまずいよな。急げ、と原付バイクをキュルキュル鳴らして向かいました。到着してインターホンをピンポンと鳴らしてみても返事は無い。お留守かしら。外から拝んでおくか、と玄関扉を動かしてみるとカラカラと動くではありませんか。よく知っている檀家さんでもやはり勝手に上がり込むのは躊躇します。とはいえ、どうせなら仏壇の前で拝みたい。今日の約束だから上がっても大丈夫だよな、でも空き巣と思われたら嫌だな。どうしよう…という葛藤が盆の棚経ではよくあります。

 

しばらく考えていたところ、奥からニャーと鳴きながらグレーの猫が出てきました。少し毛が長くて上品そうなお猫様。実は何度か訪れたときにも、近寄ってきてお腹をナデナデさせてくれました。僕のことを覚えているようです。以前にも言いましたが僕は何故か猫に好かれるタイプで僕も猫が好き。「おぉ風太(本当の名前は知らない)こんにちは」と挨拶すると足元にすり寄ってきました。背中を撫でさせてもらい、「風太(僕が勝手に呼んでる名前)家の人はお留守かい?」と顔を見つめると、こっちこっち!という感じで仏間に先導して連れて行ってくれました。そういえば、この猫は家の人が仏壇に手を合わせに行くと、いつも隣に座り込んで眺めているとのことでした。以前この家の法事で拝んでいたときにも、僕の隣で座り込んで僕の顔をジッと眺めていました。

 

仏間にいくとエアコンが稼働していて部屋がとても涼しい。ふと見ると経机の上にメモ書きがおいてあります。

「住職様

盆の棚経ご苦労様です。留守にしておりますが猫が接待しますのでよろしくお願いします。冷房をつけておきますので涼んでいって下さい。」

と書いてあります。横に冷たいお茶も置いてありました。暑さで倒れそうになっていたところです。ありがたい。

 

ローソクに火を点け、線香を立てて、仏壇を清めてからお経を唱え、お念仏もサービス(?)でたくさん唱えました。風太はすぐ横で見つめています。回向が終わり、冷たいお茶を飲んでふぅっと一息。風太を見つめるとゴロンと横になったので、お腹をナデナデしながらしばらく休憩。接待してくれてありがとう。傍で見守ってくれて嬉しかったよ。これでお酌もしてくれたらスナックのママみたいだね。どこに出しても恥ずかしくない…などとおかしな事を考えながら涼むこと数十分。汗も引いたので帰ることにしました。立ち上がり玄関に向かうと風太も後をついてきます。玄関を開けて「じゃあ帰るね。バイバイ」と風太に挨拶をすると小さな声で「ニャ」と返事をして見送ってくれました。

 

夏の日のホッとした出来事。些細な事ですが印象的で嬉しい出来事でした。お留守にしていた檀家さんも、まさか本当に猫が接待しているとは思っていないかもしれません。

 

間違いなく動物にも感情があり、心があります。言葉は通じなくても心が通じると感じることはよくあります。〝山川草木みな仏〟とは天台宗でよく使われるスローガン。私達の周りにはたくさんの仏様がいて、たくさんの心があるのです。その心を感じとるのは自分次第。観音さまが衆生の苦しみや悲しみの音を観じとるように、私たちも生きている、生かされている心を観じとらなければいけないのだと思います。同じ地上の同じ国で、同じ時代に生きている仲間たち。共に生きる仲間の心を大切に思えるか、感じとれるか、何も気づかずに何も感じないで日々を浪費していくのか。すべては自分次第なのです。

 

また風太に会ったら遊んでもらおう。にゃ。