コンフェッション~ある振付師の過ち~ | チャレンジの日々

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結婚もせず、独り隠居生活を送る元振付師でジュリアード音楽院のバレエ講師・トビー(スチュワート)。現役時代は優秀なダンサーとして名を馳せた彼のもとへ、1960年代のダンス・ムーブメントについて調べる夫婦のリサ(グギーノ)とマイケル(リラード)が訪れる。快くインタビューに応じるトビーだったが、インタビュワーの質問が深みを増すにつれ、目の前のマイケルが、当時、奔放な性生活を送っていたトビーの実の息子であるかもしれないと告げられる。DNA検査をしつこく求めるマイケルに対し、トビーはそれを執拗に断り続けるのだが・・・。

以上、DVD情報より引用

元ダンサーで、現在は振付師として生計を立てている老人トビー。


彼の元へ、バレエの歴史について取材したい、と現れる中年の夫婦。


この夫の方のマイケルは母子家庭で育ち、2年前に母親グローリアをガンで亡くしていました。


死ぬ前に、母からトビーが父親であると告げられたマイケル。
しかし、母はその頃、複数の男性と同時に交際していたこともマイケルに話していました。
父親不在の環境で苦労して育ち、トラウマを抱えてしまい、自らの子を持つ勇気が出ないマイケルに、子供が欲しい妻のリサは、「父親を探さないなら離婚だ」と条件を持ち出し、父親探しのために取材と偽ってトビーを訪ねたのでした。

しかし、母が複数の男性と付き合っていたことは、周知の事実。
なので、DNA鑑定をしようと、検査キットも持参しています。
トビーが、母の異性関係を理由に逃げようとするかもしれないから。

さて、結論から言うと。。。その結果が衝撃のラストなので、最初に書いてしまうべきではないのかもしれませんが。
鑑定の結果は、親子関係なし、なんですよね。
トビーはマイケルの父ではなかった。。。

誰がつけたのか、この映画の邦題に、「過ち」という言葉が入っているので、ちょっとこの「過ち」をテーマに、レビューをまとめてみようと思います。

まず、トビーの母親のグローリアについて。
人間なのでね、野生動物と違って心があります。
同時に複数のパートナーと付き合う、というのは。。。。
①お互いに、「心」のない関係で、お互いがそれぞれ複数の人と交際していた場合は、同時に複数と付き合う、ということに関しては問題ないのではないかと思われます。
②どちらかに「心(想い)」があった場合は、片方の人が複数と付き合っていれば、問題ありかと。
「心(想い)」がある方を傷つけますからね。

では、トビーとグローリアの場合はどうか。
2人の交際期間は1か月半。
トビーは22歳で、相手はグローリアだけであり、ダンサーとしてこれからだと意気込んでいた頃。
勿論、結婚も子供も念頭になく、毎回気にして避妊していた。
ところが、魔が差して避妊しなかった1回がある。
そのため、自分の子であることを完全否定はできない。
グローリアは複数のパートナーがいたけれど、彼女も若く、ダンサーとしてこれから、という時期。
予期せぬ妊娠をしてしまい、母性が目覚め、産むことを決める。
しかし、産むことに反対するパートナーの元にはいられないと、姿を消します。
二度と関わらないでくれ、とトビーにくぎを刺して。
しかし、トビーは息子の活躍を新聞で読むと、それを切り抜き、学費の足しにと、1万5千ドルをグローリアに送ります。
息子が活躍するフェンシングの本も買い、涙する。。。
彼は、父親として生きられなかった「過ち」を抱えて生きてきたのです。

結論は、親子関係なし、だったのですが、それをグローリアが知っていたのか否か。。。
知っていて、どちらかというと、トビーが父親だとした方が、格好がつくから、息子にトビーが父親だと言ったのか。。。
たとえ知らなくても、同時に複数と付き合っていれば、父親を断言することなどできないのではないでしょうか。
このグローリアの罪(過ち)の方が大きい気がしますね。
グローリアの選択肢は幾つかあったと思われます。
まず、産まない選択。
宗教上など、何等かの事情があって産まない選択が出来なかったとしても、シングルとして産み、公的福祉制度の助けを借りて育てるという選択。
もしくは、産んで養子に出すという選択。

その中で、産んで福祉の制度も利用しながら、自らも必死に働きながら、マイケルを育てる道を選んだわけです。
自分で選んだ道なのだから、もっとマイケルの心にトラウマを植え付けない育て方をしなければいけなかったのかもしれません。

でも、人は自分のルーツを知りたがるものだし、親に対する慕情というものは拭い去れないものなので、いつかは父親探しをしたでしょうけどね。

トビーはマイケルに対する謝罪の念も愛情も伝え、孫の顔も見せて欲しいという心の解放も見せます。
それにようやく凍った心の氷が解けるマイケル。
先に進める心を持てたのです。

そこへ、親子関係なしの鑑定結果。。。
もうビックリです。。。

心の中で、息子の存在をずっと抱えてきたトビーも、ようやく父親を見つけたマイケルもビックリの結末。

救いは、2人も、現状を打破できたことには変わりなく、前へ進んでいける心を持てたことですかね。

邦題の、過ちには、振付師の、という言葉がついているので、トビーが過ちを犯したことになるのですが、何がトビーの過ちか。
子供がいらない時期に避妊しなかったこと。
(違うんだけど)貴方の子よ、と言われた時に、父親となることを拒否したこと、ですかね。

でも、母親も、複数と付き合っていた時点で、過ちですからね。。。

マイケルの心の傷は、父という存在にも、母という存在にも、つけられていた訳です。

それを、父でもないトビーが癒すという。。。。何故なら、トビーにも過ちがあったから。

子供を持つ時に、生まれてくる子供にこんな複雑な地盤を与えてはいけない、として締めます。

私的評価星