「くるくる〜くるくる〜〜」
豆太は、回転式の椅子の上で、カップラーメンができあがるのを待っていた。
(バシャーン!)
「うぇーーーん、熱いよーーー」
「あらら、すぐに冷やさなきゃ!」
「すみません!ちょっと待ってくださいね!」
勢い余った豆太の腕に、熱々のラーメンが降りかかった。
豆太の母は、慌ててお客さんに謝って、豆太の腕に水を当てて冷やした。
「あらあら、大丈夫?」
お客さんも慌てた様子だが、どうすることもできず、心配そうに様子をうかがっている。
喫茶店を営む母のもとに生まれた豆太は、保育園が休みの日には、母の喫茶店で1日を過ごし、店の前の駐車場で石ころを蹴飛ばしたり、隣のお寿司屋さんに遊びに行っておにぎりをもらったりしながら、いつもどこかでひと騒動を起こしていた。
豆太「ひぃっくひぃっく…痛いよーーー」
お客さんがいることなんて忘れて豆太は泣きわめいた。
母「バカだねーあんたがじっと待っとかんからよー」
母「まぁ大丈夫やが」
小さな豆太を抱っこして、腕に冷水をかけてあげながら母は少し笑って声をかけた。
お客さんを放っておくわけにもいかず、急いで会計処理とお見送りをして、母は再び豆太の腕を冷やした。
しかし、ラーメンの熱湯は4歳児の皮膚にはかなり熱く、腕は真っ赤に焼けてしまっていた。
「こりゃ痛みが続くし、皮がむけるかもしれんねー」
母はまた笑みを浮かべながらそう言うと、豆太の頭をなでた。
次の日には痛みがひいてきたが、腕はまだ真っ赤だったので、母は豆太の腕にアロエを塗って包帯を巻き、十分に冷やしてあげた。
痛みに強く、言うことの聞かないやんちゃ坊主は、火傷した腕を父や兄に見せびらかすと、包帯を巻いたまま遊びに出かけた。
(カキーン!)
(パシッ!パシッ!)
「しゅんちゃんいったよー!」
「まめちゃんもっとゆっくり打ってよー!」
野球が大好きな豆太は、グローブとバットを持ってチャリでどこまでも遊びに出かけた。
近所では有名なやんちゃ坊主で、友達と喧嘩をしては怒られ、道端でおしっこをしては怒られていた。
涙を流しながら帰ってきたかと思うと、遊び道具を見つけてはまた怒られるまで遊んだ。
あるとき、豆太はビー玉より少しサイズの小さいプラスチック玉で遊んでいた。
家の片隅で見つけたプラスチックの玉で遊ぶのが楽しくて楽しくてしょうがなかった。
男の子は、大切なものを隠したがるものだが、豆太の場合、隠す場所が悪かった。
(トントントントン、シャッシャッシャ)
台所で、母は軽快にニンジンを切ったり、大根をすりおろしたりしていた。
「お母さんお母さん、鼻血がとまらん。」
豆太は母に声をかけた。
母「あらあら、そっちにティッシュがなかった?」
豆太「ううん、あった」
母「じゃぁティッシュ詰めときなさいよ」
豆太「玉が抜けんくて痛い…」
母「ん?・・・」
豆太「玉を鼻に入れたら抜けんくなった」
なんと豆太の考えた玉の隠し場所は鼻の穴だった。
母「…ええええー!何してんの!」
母は大慌てで掃除機とストローを引っ張り出してきて、ストローを豆太の鼻に突っ込んで、反対側を掃除機でおもいっきり吸った。
(ブイィーーーーン、スポッ!)
オレンジ色のプラスチックの玉が、豆太の鼻から出てきた瞬間、母はあまりの出来事に笑い転げた。
鼻は真っ赤になって痛かったが、母が笑ってくれたのが嬉しくて、豆太も笑った。
そんな騒動はしょっちゅうあったが、次の日には何事もなかったように、ボールを投げ、大声を出し、たくさんたくさん体を動かした。
平和で愉快な日々を過ごした。
この子はどんな子に育つんだろう?
田舎のやんちゃ坊主は将来を気にされがちだ。
中学生になり、盗んだバイクで走り出すほどにはならなかったが、チャリでどこまでも遊びに出かけ、ろくに勉強もしなかった。
勉強のことなんて1ミリも考えず部活を楽しんで、4歳の時と変わらず、たくさんたくさん体を動かした。
豆太は欲望のままに生きていた。
そんな豆太にも難題は降りかかってきた。
人生の上り坂は、いきなり出てくるので、壁のように感じるものだ。
「豆太君、高校はどうするの?」
困ったことに、中学生にもなると必ずこういった質問をされる。
全ての中学生を苦しめる究極の質問だ。
どう転んでも、「勉強しなきゃいけないね」という結論に至り、悔しい悔しい負けゲームがそこには待っている。
母からも、「私立に行かせるお金なんてないんだから、しっかり勉強しなさいよ!」と、怒られ続けた。
バイクを盗むほどのアーティスティックな感性や、頓知のきいた回答を用意できるほどの知性がなかった豆太は、しぶしぶ勉強することにした。
母の喫茶店に来ていた塾講師のお客さんに勉強を教えてもらい始めたのだ。
部活と勉強に挟まれて、先生の目の前で爆睡したりもしていたが、あらゆる誘惑と戦いながら、わりと真面目に頑張った。
すると、本当にすっからかんの頭だったためか、どんどんと成績が伸びていった。
水を得た「魚」ならぬ、水を得た「豆」のようだった。
芽を出し、茎を伸ばし、枝になった。
3年生のときには、豆太は枝太くらいにはなっていた。
そして枝太は、何とか県立の高校に進学できたのだ。
腕にラーメンをこぼそうが、鼻にプラスチック玉を突っ込もうが、人間はちゃんと成長する生き物のようだ。
この物語は続く"かも"しれない。。。笑
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こんな何でもない物語を書きながら、少し思うことがあった。
子供に将来の夢や進路を聞くのやめませんか?笑
