一橋記念講堂で開催された「起業家精神(アントレプレナーシップ)こそが日本を変える」に参加。実に刺激的で面白かった。
東京大学産学連携本部、日本ベンチャー学会、スタンフォード大学STAJE(Stanford Project on Japanese Entrepreneurship)、主催による、実に魅力的で内容の濃いシンポジウムであった。
主催者側の、伊藤邦雄氏(日本ベンチャー学会会長、一橋大学大学院教授)が、日本の課題の一つは、アントレプレナーシップとベンチャー企業を創出する起業文化の醸成にあると、今回の趣旨を説明された。
日本の起業文化の現状を共有した上で、経済危機を乗り越え、新たな活路を見出すために、起業家精神の高揚をどのように具現化できるのか、起業文化醸成の要件についての白熱した討論は実に刺激的であった。
米国のル―ス駐日大使ご自身も、大使就任までは、シリコンバレーで現役でバリバリの辣腕弁護士を永年されてただけのこともあり、現場感覚に富んだ熱のこもったレクチャーを展開。面白かった。
かような。多士済々の講師陣の発言の中でも、特に印象に残ったのは、以下の2点であった。
1つは、米国カリフォルニア在住のAZCA社長の石井氏の発言。
米国の場合、イノベーションの80%は、ベンチャーに依っていること、さらに、民間雇用の11%が、米国GDPの21%がベンチャーに依っているとの解説であった。つまり、現代米国の反映は、アントレプレナーシップ豊かなベンチャーなくして成り立ちえないとの報告であった。石井氏には講演後にご挨拶し名刺交換させていただいた。実に魅力的な方である。今度、米国に出向いた際には、ぜひ再会しいろいろお話を伺いたいと思った。
また、もう1つ興味深かったのは、産業革新機構の朝倉氏の発言。
かつては、わが国もソニーの前身や、松下の前身のように、世界に冠たる偉大なアントレプレナーシップが生まれたが、ここ最近、ここ数十年間は、一部のソフトバンクの孫さんや楽天の三木谷氏等のカリスマの登場はあったものの、概して、本格的な起業家精神(アントレプレナーシップ)の登場が米国に比べてさほど活発になかった。その理由は、何か、との問題提起に対する解説として、彼いわく、その理由は、高度成長を意図した重厚長大産業育成の国家戦略として、霞が関の官庁や丸の内・大手町の一流企業に、きわめて異例なローリスク・ハイリターン型の終身雇用制度システムを設けることで、強いインセンティブを梃子に、人為的に、優秀な人材を傾斜的に集約してきた弊害だとの説明であった。それが、今日に至るまであらためることもなく、続いたために、ベンチャー分野に一種のモラルハザードを招き、こうした土壌にリスクを冒してまで起業しようとするアントレプレナーシップが生まれるわけがなかったのであると喝破した。
なるほど両者とも面白い分析である。
わが国には独特の企業文化もあり、一から十までスタンフォード流のベンチャーモデルが、そのまま日本で移植できるわけでもなく、またそれが最善でもなかろうが、今日も登壇されていたビル・ミラー教授がHabitat(自生地)と言うところの自律的に形成された産業集積地が、なかなか生まれにくいわが国の状況を、客観的に認識し、分析し、未来志向的な工夫してゆくことが肝要であろう。