最近、映画もクラシック音楽ついている。


去年見た「クララ・シュ―マン」のクララ・シュ―マンとロべルト・シュ―マンから始まり、「シャネルとストラヴィンスキ―」のストラヴィンスキ―、そして先月は「コンサート」そして今日の「ドン・ジョヴァンニ」のモーツアルトである。


世田谷徒然日記


天気も好いので、午前中ジムでひと汗かいた後、澁谷に出向いて、東急文化村にある「ル・シネマ」でカルロス・サウラ監督のイタリア・スペイン合作映画「ドン・ジョヴァンニ」を見てきた。モーツアルトに関連する映画としてはもう20年以上も大昔1984年に「アマデウス」を観て以来2作目である。


実に面白かった。かようにしてモーツアルトは曲を作っていたのかと感心する。


モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』はあまりに有名である。しかし、意外にも、その台本を書いたイタリア人劇作家の名前は知られていない。このイタリア人劇作家は、ロレンツォ・ダ・ポンテと言う。今回の映画「ドン・ジョヴァンニ」の主人公はこのダ・ポンテ自身である。モーツァルトは脇役である。


ちなみに、オペラの方の『ドン・ジョヴァンニ』の原題は「Il dissoluto punito, ossia il Don Giovanni 」でその意味は「罰せられた放蕩者またはドン・ジョヴァンニ」である。ケッヒェル番号は K.527。


ダ・ポンテ自身の恋愛やダ・ポンテとモーツァルト、カサノヴァ、サリエリなど実在の人物とのふり合いが面白い。舞台は、ウィーン。そこに名だたる人物が一堂に会するので、音楽好きにはたまらない。


ドン・ジョヴァンニは、17世紀のスペインの伝説の放蕩者の名前で、スぺイン語ではドン・ファン、正式には、ドン・フアン・テノーリオ(Don Juan Tenorio)。イタリア語でドン・ジョヴァンニ、フランス語ではドン・ジュアンである。モリエールはこの主題で『ドン・ジュアン』を書いている。


この映画、物語の展開や構成や音楽だけでなく、名撮影監督ヴィットリオ・ストラーロの品格ある映像も好かった。


映画でも、有名な「恋人のカタログの歌」を歌うシーンが出てきて、「イタリアでは640人、ドイツでは231人、しかしここスペインでは何と1003人だ。」とドン・ジョヴァンニの放蕩を披露している。石像が、ジョヴァンニの手を捕まえ、「悔い改めよ、生き方を変えろ」と迫るシーンもオペラファンには嬉しい。


高名な物理学者であると同時にモーツアルト研究家であったアインシュタインが指摘したことで、注目された「アンナの告白」も興味深い。最初の方に、ドン・ジョヴァンニがその2階アンナの部屋に忍び込むシーンが出てくる。彼女は実はその忍び込んできた黒いマントの男つまりドン・ジョヴァンニを許婚者のドン・オッタヴィオだと勘違いし、間違えて抱かれてしまった。その後、彼女は許婚者の手前、抱かれたとは言えず逃げたと説明する。それを聞いて当の許婚者のドン・オッタヴィオは安心する。だが実際に逃げたのではない。この悲喜劇的な効果をアインシュタインは指摘している。


以前、このオペラ『ドン・ジョヴァンニ』について、実に興味深い時代考証を読んだことがある。そこには、当時の大航海時代を経た17世紀のスペインの事情が説明してあった。当時は、スペインの男どもは皆海外に出て行ってしまって、男女の人口比率は男が圧倒的に少なかったらしい。日本の戦時中にも似ているが、大航海時代のスペインでも皆働き盛りの男たちは新大陸やアジアを目指した。こうした男の人口の一方的な激減を背景にした男女比のアンバランスが、ドン・ジョヴァンニを生んだとも言えよう。異常時の需給不均衡が生んだ物語である。


またオペラ『ドン・ジョヴァンニ』を観るのが楽しみになった。


【ドン・ジョヴァンニ】

イタリア・スペイン合作映画

監督: カルロス・サウラ

出演者: エミリア・ヴェルジネッリ,

     リノ・グワンチャーレ,

     ロレンツォ・バルドゥッチ etc.


世田谷徒然日記