下高井戸で映画『再会の街で』を観た後、本屋でふと三島由紀夫の『美しい星』が目にとまり買ってみた。衝動買いである。
さっそく喫茶店でしばし読みはじめたところ。
不覚にも三島が37歳の時に、こんな型破りで反現実的な荒唐無稽なややSF的な作品を書いていたなんで知らず、驚いた。この小説には他の三島の小説には出てこないような宇宙人や空飛ぶ円盤が登場してくる。
ちょうど徒然人がフランクフルトにいたころ、たまたま三島のオペラを観た際に、その題材となっていた『午後の曳航』について、ドイツ人達と座談会のようなものに同席するはめになり、彼らが舌をまくほどに三島に精通していて同じ日本人である自分がいかに三島について無知であったか思い知らされたことを思い出した。
この奇怪な小説は、ちょうどその『午後の曳航』が世に出た前の年、昭和37年に新潮社より単行本でだされた。
地球と人類の状況を、宇宙人の視点から大局的に観察するこの『美しい星』で展開している見事な方法は、実は、徒然人も現在地球環境問題にささやかながら関わっていて、日ごろ薄々とその必要性を夢想していた矢先だっただけに、見事にそういった客観装置から人類の運命を論じ、問題の核心に迫る仕掛けを提起した三島は、やはり只者ではないと感嘆した次第。
先日知り合った英国の大学で日本文学の教壇に立っていた教授が確か三島が専門だったので、今度あった時にでもこの本について意見交換しようと思う。それまでに読破しておきたい。
高橋義孝にして「最も困難な現実と反現実の溶接に成功している」と絶賛せしめたこの小説がはたしていかがなりや、これから楽しみに読んでゆくこととしよう。
