おりしも徒然人が欧州出張中に「炭素銀行(Carbon Bank)」構想が浮上した。


目下、温暖化ガスの排出権取引をめぐって、欧州連合(EU)で炭素銀行の設立構想が議論され盛り上がっている。面談したオックスフォード大学の教授とも、また王立研究所の研究者からもタイムリーな話題として結構盛りあがった。


この概要と背景は以下の通リ。


この「炭素銀行(Carbon Bank)」構想は、ブラウン英首相が先月21日に欧州委員会に提案したもので、温暖化ガスを排出できる上限枠の企業への配分や取引市場の運営を、欧州委や加盟国から中立的なカーボン銀行に委ね、市場機能を高めるというものである。ブラウン首相はブリュッセルでバローゾ欧州委員長と会談後、記者団に「独立性の高いカーボン銀行の創設で一致した」と語った。


以前から徒然人が慎重に検討してきた「世界単一通貨(World Single Currency)」としてのカーボン(温室効果ガスの排出権を世界水準で貨幣化したもの)を独占的に発行するカーボン中央銀行「世界環境銀行(World Environment Bank;WEB)」の「欧州版」とでも言ってよかろう。


このブラウン構想によるカーボン銀行の設立の背景には、透明性を向上させ、EUの排出権取引市場の国際化をさらに進める狙いもあるとのこと。 英国のミリバンド外務大臣(元環境相)が2年前に提唱したパーソナル・カーボン・カードとの政策的整合性も関心のあるところである。


ブラウン首相は具体的な枠組みは明らかにしなかったが、今回の出張でも受けた感触では、実際にはこの構想を担保する作業は英国の研究者によって多角的にコツコツと進められていると聴く。単に経済学的な検証だけではなく、社会学的、心理学的、政治学的検証も踏まえたfeasibility studyも相当進んでいるようである。


公開情報によると、欧州委の関係者に言によると、企業に温暖化ガスの排出枠を割り当てる権限を欧州委や加盟国から、独立機関であるカーボン銀行に移して中立性や透明性を確保するのが提案の柱らしい。


数年前から議論してきた徒然人の構想では、現在のIMFや世界銀行の人材と機能を一部移管し、カーボン中央銀行「世界環境銀行(World Environment Bank;WEB)」を創設して、そこに現在の国連のCDM委員会のCER発行権限を移管し、単独通貨発行権(一種のシニョリッジ)を与え、その通貨を国際的な単独貨幣として「カーボン」とする。このカーボンは世界中の誰もがどこでも同一価値で使え、交換できる。

このカーボンの交換可能性(convertibility) と受容性(acceptability)はWEBによって100%担保されている。当初はドルやユーロや円等のレガシーカレンシーと並存し、やがては、世界単一通貨(World Single Currency)」に収斂させてゆく。


この「WEB構想」は一石二鳥(one stone two birds)の効果があると考える。


「一石」は「国際通貨としてのカーボン」で、「二鳥」は、「気候変動・温暖化への貢献」と「過剰流動性対策への貢献」である。


気候変動・温暖化への貢献は既に相当議論されてきたので長い記述は割愛するが、国際通貨としてのカーボンは、二酸化炭素等の温室効果ガスを「グローバルキャップ(Global Cap)」で規定し、それを世界中の諸国民に均等配分することで一種のマクロ的な網をかける効果をもたらす。そこには二酸化炭素等の温室効果ガスを使用する権利は人類皆平等であってしかるべきで、先進諸国も途上国も同じ人類なのだから同じ配分であるべきだと言う哲学がある。1人1人が環境に優しい行動をすれば、カーボンはその保有者に利益をもたらし、逆に環境に優しくない行動をすれば、カーボンはその保有者に不利益をもたらし、その結果、多くの人々が自然と環境配慮行動をするようになる絶大なる効果がある。


一方、後者の「過剰流動性対策への貢献」は見落とされがちな点であるので触れておきたいが、1997年のアジア通貨危機も、昨年からのサブ・プライム危機も、実は、「同根」で、その通低している「根本問題」は世界を被っている「過剰流動性」である。


1971年のニクソンショック以降、金本位制からとき放たれたドルが世界中を席捲しいまやアメリカ国内のドルの7倍ものドルが世界中に流布している。お金はお金を生もうとして世界中を駆け巡る。そして本来借りなくてもいい人や借りることをあきらめていた人々に無理な形でお金を貸すようになる。前者はアジア諸国にムリヤリ短期で外貨で融資し、それを一斉に引き上げてしまったところに原因があり、後者は、アメリカ国内の貧困層に最初の2年間だけ低利の住宅ローンを提案し、ムリヤリ融資し、結局債務不履行がっ多発する事態をまねいた。こうした元凶とも言うべき世界の過剰流動性は、通貨がしっかりと何らかの貴重価値に「本位」してこなかったことに根本原因があり、その処方として、「環境本位制」を「カーボン」にリンクした形で提案すたのがこの「WEB構想」である。


当然のことながらこの構想はラフスケッチではあり、これから多くの専門研究者の検証による担保を必要とするが、1つ心強いのは、こうしたドンキホーテ的な構想を「ユーロ」と言う形で実現した欧州の実績である。そしてその欧州からまさにこの構想に符合する「炭素銀行」構想がでているという事実である。


いよいよ舞台の幕は挙がった。面白い物語はこれから本格的に始まる。