これは必見である。実に痛烈であった。

アメリカという巨大システムの終焉を予感させる極めて本質的な映画である。


今日、日比谷のシャンテシネでマイケル・ムーアの「シッコ(SICKO)」を初日で見てきた。

満員盛況で、マイケル・ムーアの新作に対する関心の高さが伺えた。


マイケル・ムーア(Michael Moore)監督の作品はいままでずっと見てきたが、特に今回は圧巻であった。この映画の題名であるSICKOとは、公表されている解説によると、「いかれた」を意味する俗語で、問題を抱えるこのアメリカの医療制度を守ろうとする人たちをからかう意味で付けられたらしい。 まさに米国自体がSICKな状況である。


ムーアが指摘している点は、どうやら、単にアメリカの医療制度というよりも、もっとその奥底に底通しているアメリカの資本主義制度自体のひずみや深刻な病理ではないかと感じた。


この映画で彼が直接訴えようとしているのは、弱者がまともな医療を受けることができず、医療業界、保険業界が潤っていく矛盾であり、こうした悲惨なアメリカの人間疎外の実情である。そしてこうしたアメリカとの対比で描かれるのが、隣国カナダや英国やフランス等欧州諸国のケースである。またさらには皮肉なことに近所の目と鼻の先にある、キューバの医療機関を訪問し、アメリカより格段に優れている上に利用者は無料でかつ高水準のキューバの医療制度まで取材して、相当露骨で具体的な比較をしている。


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アメリカには勤務先の同僚・先輩や学生時代の友人や義弟やら、多くの知人友人がNYやボストン、カリフォルニア、サンディエゴ等の各地に住んでいたが、彼らから異句同音に聴くアメリカの医療実態は、一旦病気で外科手術をするとなりと目がとびでるほどの支払いを余儀なくされるという話であった。彼らの太宗は企業からの派遣ステイタスであったから、会社の支援もありまだ自己負担は軽微であっただろうが、それにしても世界一豊かな国と呼ばれている米国の平均寿命がキューバ等よりもむしろ低い水準にある実態を聴くにつけ、実に寒々しい感じがした。貧富の格差が大きく、富裕層は健康を金で買ってる一方、最下層の貧しい人々は、仮に指を2本切断し、両方とも手術で縫合できる状況であっても、予算の制約で涙を呑んで1本だけを縫合したという悲惨な実態がこの映画で明らかにされている。


「おちおち病気にもなれないよ」という友人の言葉を思い出した。アメリカの医療保険制度は自己責任による民間会社への個人加入が基本だが、国民の16%(2005年)が保険に未加入である。しかも、民間の保険に加入しても適用除外条件が多く、いざというときに使えないという問題がある。ムーア監督は、グラウンド・ゼロの現場で粉じんを吸い込み呼吸器疾患になった元消防隊員が、1本125ドルの治療薬の使用を医療保険が認めないため、治療を控えていたが、キューバでは外国人にもかかわらず無料で治療を受け、同じ薬の値段が1ドルもしないことを皮肉混じるに実地調査を示しながら指摘した。



ニューズによると、驚くことに、米の財務省はムーア監督らが政府の許可なくキューバへ渡航、撮影したとして、キューバ経済制裁強化法違反容疑で捜査を開始したらしい。さっすがに国家の圧力に慣れておるムーア監督は、フィルムを押収されることを警戒し、フィルムのコピーをカナダに保管したという。