良きにつけ悪しきにつけ、いまや世界中の人々の日々の幸せにとって、瞬時にしかも甚大な影響力を伴って世界を駆け巡る資本の動きは無視できないものになってきている。世界経済の発展に貢献している一方で、そのために、1997年に起こったアジア通貨危機のようにアジア諸国の人々が一夜にして不幸のどん底に陥ったり、戦争が起きたり地球環境破壊が加速したり、その弊害も大きい。


 そもそも、有史来の人類の歩んできた歴史を振り返れば、資金が移動するたびに、移動した先が世界的な覇権国になり、覇権国が代わるたびにまた世界中の資金がそこに移動する歴史を繰り返してきた。世界の資本の動きは昔から非常に国際的であり、国益等のアイデンテテイを無視して利益の最大化を求め増殖し続けている。たとえば、18世紀のイギリスに産業革命を起こした蒸気機関や鉄道、大量生産の技術は、イギリス国内での投資の利回りが下がると、欧州大陸諸国やその他の国々に伝播されている。そこに国家の威信や国益等のアイデンテテイはないのである。資本家は、イギリスの産業革命で儲けたカネを、次はイギリスのライバルであるはずのフランスやドイツに投資し、イギリスで培われた工業の技術も独仏に移転し、独仏で産業革命を起こして儲けを増やした。覇権がアメリカに移ったときも同様であった。ニューヨークの資本家層は、イギリスからアメリカに世界の覇権が移ることに伴い、1890年代から1930年代にかけて、ロンドンからニューヨークに移ってきた、ユダヤ人を中心とする勢力である。欧米の資本家の中心地は、16世紀にはスペインにあり、資金はスペインの植民地開発に回されていた。その後17世紀にオランダ(アムステルダム)に移ってオランダの植民地開発に資金が使われ、その後18世紀には産業革命のイギリスに移り、20世紀はじめにニューヨークに移っている。この繰り返しである。


徒然人がフランクフルトにすんでいたころよく友人を案内してマイン河畔のユダヤ人博物館に行ったが、ロスチャイルド家の本籍はフランクフルトで「赤い楯(ドイツ語でロートシィルト)」が本家である。そこからいまの世界的な資本物語が始まったのである。


いまや地球環境という新しい制約要件が問題提起されている中で、この資本の動きにどう調和させてゆくのか人類の英知が問われている。