最強のふたり というとても素敵な映画がある。

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フランス映画だけど、わかりやすくすっきりした明るい作りで、でもとても丁寧に作られている。
音楽もこだわっていて、黒人男性と富豪の二人の対比を、音楽でも、ダンス系音楽とクラシックの対比で表現されている。
 
この映画のすごい所、面白い所を挙げればキリがないのだけど、私がはじめに心奪われたのは、冒頭のシーン。
 
夜の高速道路の静けさの中、ショパンの夜想曲が流れる所。(余談だけれど、ノクターンを夜想曲と訳した人、素敵だなあといつも思う)
映像と音の美しさにやられてしまった。
絶対面白い映画に違いない、と、もうここでこの映画の勝利が決まったと思った。
 
映画が素晴らしさとともに、ショパンの凄さも再認識させられた。
 
だって、ショパンの時代、あんな高速道路、ありますか??
 
今「クラシック音楽」として世に残っている何百年昔の音楽たち、その音楽を作った作曲家は、皆大天才。
ベートーヴェン、バッハ、モーツァルト、ブラームス、シューベルト、ドビュッシー、ラヴェル。
時代を超えてきたし、これからも超え続ける。
 
でも、私は、最も「モダン」な作曲家は誰か、というと、「ショパン」と答える。
 
高速道路でも、ロボットでも、ITでも、月でも火星でも、ショパンの本質は全く変わらず、懐古的な空気には一切ならず、凛と存在出来る。
 
ショパンは「ロマン派」と呼ばれる時代の人で、音楽は決して冷静なものではない。
「革命」に象徴されるような「怒り」、ソナタのような「死」、「愛」「哀しみ」「孤独」「優しさ」「愉しさ」、そこには人間の全てが凝縮されている。
それなのに、ショパンの音楽からは、ショパンの「個人的な声」は、不思議と全然聞こえてこない。
 
例えばほぼ同じ年のシューマンは、「クララが好き、好き、愛してる、愛してる、愛してる、死んじゃうーーー」と心の声がもう世界中に響き渡る。
そういうパーソナルな感情が、ショパンからは見えてこないのだ。
 
「革命」が、ポーランドを想うものであったとしても。マズルカが故郷の民族音楽をベースであっても。
 
ショパンの表すものは、全て普遍的な所に昇華された、括弧つきの感情だ。「哀しみ」「愛」「喜び」「嬉しさ」など、全て。
ポップス、ロック、演歌、民謡、現在の日本で流行する音楽とは、全く真逆な位置にいる「ロマン派」なのだ。
一番感情から離れた所にいるようで、一番本質的に人間を物語る。
 
その孤高さと普遍性により、ショパンはいつの時代も生き続けるし、その音楽は、コラボした対象を、より清潔に美しく哀しく際立たせる。
「戦場のピアニスト」のショパンの演奏シーン、それから、もちろんあの羽生結弦選手の「バラード第1番」も。
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