夫と2人で話し合う。

静かな夜である。


私は、病名が確定した日は涙を見せてしまったが、

翌日の治療が始まってからは、娘と過ごす病院でも、息子の前でも基本的には明るかった。



だけどやっぱり不安なのだ。


娘の病気のこと。


娘は1クールは無事に終わったけれど、やはり娘の病気は楽観的なものではないこと。


今回無事にがんを取り切れても、神経芽腫は再発する子が多いらしいこと。


再発した場合の治療法はまだ確立されていないらしいこと。


完治したとしても、定期的な検査や治療は一生続くこと。



娘の人生にはこれから、私達がしなかったような苦労がたくさんあるだろう…。




そんな、私が色々と後ろ向きに考えていることを、ぽつりぽつりと夫にこぼした。


やっぱり涙が出てしまう。


だけど今は許されるのだ。

唯一、夫の前だけなら泣いてもいい。(私ルール)



夫はうん、うん…と聞いてくれていた。



それから私が言いたいことを全て吐き出した後、


「俺たちにできることはさ、娘が楽しく過ごせるようにするだけだと思う…。娘が治療をやりぬくのも、そのあとも…」

と言った。



確かに、この話の結論はそこに落ち着くのかもしれない。



病院を治療実績が多いところにした。

より娘が色んな人からサポートを受けられるようにした。

治療についてはプロの医師に任せるしかない。


じゃあ、これから親ができることは?


本人を前向きに治療に向かわせること。

つらいことがあるだろうけど、楽しく過ごせるように支えること。


確かにそうなんだろう…



だけど、それはこの瞬間の私には真っ直ぐ落ちてこなかった。


正直に言うと、

「でた…この正論野郎…」と思った。



男の人に多いかもしれないが、

夫は私がダラダラ話した相談に、

第一声で解決策、最終結論をガツンと返してくる。


まぁ、仕事はそうだろう。

だけどこちらはそのモードではないのだ。

カウンセリングしてほしいモードなのだ。


すぐに解決策を求めたわけじゃなく

まずは気持ちに寄り添ってほしいだけだったのだ。


いやいや、今はまだ共感フェーズぞ?(私ルール)っていう違和感があった。



そんな不満をチラリと感じたが、

間違いなく夫は悪くないだろう。


とりあえず黙ることにした。

「うん…」とかは言ったと思う。


夫は後ろから抱きしめてくれる。

それだけで私の心は癒される。


それでいい。


それでいいのだ。