脱毛が進んだ娘の頭は、がんの患者が身近にいない人には見慣れないものだろう。


だって、私も初めは驚いてしまったのだ。



じろじろ見られたりしないだろうか。

好奇の目で見られないだろうか。


脱毛が起こってすぐの頃、そんなことをすごく気にしていた。


ある日、娘と2人で小児病棟を出て、

外来の人もいる検査病棟に向かうことがあった。


娘にマスクをかける。

そして、初めて帽子を被らせた。



娘には、頭が寒くなるといけないからね、

と言ったが、どちらかというと人目から隠したかったのだと思う。



娘の脱毛はなにも恥ずかしいことはない。

娘自体は気にしていない。


だけど、私自身が人の目を気にしている。

娘の頭を隠したいと思っていたのだ。



娘のことを恥ずかしく思う自分が情けない。

だけど、やっぱり帽子は被らせておきたい。

帽子には保護の意味もあるのだ。そう納得させた。


そんな、葛藤が少しあったと思う。




だけどそれは長くは続かなかった。

娘の頭にすっかり慣れてしまったのだ。



見慣れるどころか、生まれたての赤ちゃんみたいな頭でかわいいな、とさえ思っている。

多分に親フィルターがかかっていることは自覚している。


少し残ったふわふわの髪の毛は柔らかい。 


そして髪の毛がない頭は体温を直接伝える。

つまり、とっても温かい。


私は娘の、柔らかくて温かい頭に頬擦りをして眠るようになった。