抗がん剤について説明される。


正直、わたしのライフはもう残っていない。



治療で使う抗がん剤を並べて、主な副作用などの説明を受ける。


もうね、薬の名前が全部カタカナなのよ。

どれも耳馴染みがない響きで、スッと頭に入ってこない。


当たり前のように繰り返される薬の名前、こちらは全く区別ができてないんですよ、先生。


そうは言えずそのまま説明が続く。




食欲がなくなる、吐き気、脱毛、骨盤抑制(赤血球、白血球、血小板が著しく減少する)は聞いたことがあった。


知らなかったものとしては

聴覚障害、不妊 があった。


この両方はほぼ起こると思っておいた方がいいらしい。それだけ薬を使うと言われた。


あとは肝臓や腎臓の機能障害。これはなんとなく想像できる気がする。



喉がヒリヒリする感じがする。

先生に質問しようにも、震えて声が出ない。



なんなんだよ。


娘、半分の確率で生き残っても、

後遺症が残ることがほぼ決まっているとか、

これはもう、どう受け止めたらいいんだよ。



先日、夫からは

「娘ちゃんがいるところでは笑顔でいて。辛い顔しないようにしよう」

と言われていた。


しかも今回は息子もいる。

今日こそは絶対泣くわけにはいかない、と気合を入れて臨んだ試合(?)だった。


だけど情けないことに、また泣いてしまった。

泣く予定がなかったからハンカチもない。

仕方なく袖で拭った。


息子は私が泣いていることに気づかないわけがないのに、

いつもだったら「え!ママ泣いてるの〜?」ってからかいにくるはずなのに、


何も言ってこなかった。


それはなんだか不自然だった。


不自然だったけど、ありがたかった。



だから私も、

説明が終わった後、悲しいことなんて一つもなかったかのように、

息子を笑いながらおんぶして、少しだけお散歩をした。


帰る時に夫は一言だけ

「…きつかった」と言った。


夫が弱気なことを言うなんて珍しいなと、働かない頭で思った。


私は、もう地元に帰ろうと思った。