1時間くらいして娘が検査から帰ってきた。


まずはちゃんと帰ってきたことに、ほっとした。


途中で鎮静が再度入ったらしく、しばらく眠っていた。


その間に夫が病院に到着する。


夫はすぐに娘に会いたがったが、付き添いは1名のみで面会もできないため、

小児病棟の外の待合スペースでしばらく待ってもらった。



19:00


ようやく小児外科の先生から呼ばれ、娘の病気について説明を受けることになった。


場所は外来の診察室。


誰もいない薄暗い廊下を通って、診察室に入った。


お昼に会った、穏やかそうな先生がいた。 




引き続き検査はあるので確定ではないが、

現時点で病名をつけて治療を速やかに開始するらしい。


病名は


神経芽腫

それに伴う水腎症


だった。


人生で触れたことがない単語だ。


腫ってつくから、

やっぱりガンなんだ…と思った。




先生が3Dグラフィックを元に説明をしてくれる。


先生のマウスの動きに合わせて、娘の身体の中が立体的に輪切りされたように見える。



大きな臓器みたいなものを先生が指す。


「これが腫瘍」


え?いやいやいや


大きすぎる。

どの臓器よりも大きいのでは。


「かなり大きく、お腹の半分くらいありますね」


え、娘ちゃん、こんなのお腹に隠してたの…


「大きすぎて血管とかを巻き込んでます」

「左の腎臓が圧迫されて腫れています。これが水腎症です」


確かにこれだけ大きいのがいたらそうか…


「鎖骨のところのリンパ節も肥大化していますね」

「遠隔転移している可能性が高いです」


転移…転移ってやばいのでは…



先生は私達にも分かるようにゆっくり話してくれた。

それと3Dグラフィックの効果は大きかった。



覚悟してたつもりだったけど、


本心では娘のお腹にガンなんてないと信じていた。



だけど、実際のモノを見ると、娘は病気なんだと受け入れるしか、なくなってしまった。


それだけ明らかに異様なモノが映っていた。



娘はガンなんだ、本当に大きな腫瘍があるんだ、

と頭の中でつぶやく。


すると一気に現実味が増して、

涙がぽろ、っと落ちてしまった。



涙を我慢するときははじめの1滴を零さないようにすることだけが大事だと思う。


零さなければ、しばらく耐えていると溢れそうな涙も瞳の中に馴染んでいく気がする。



だけど一度零れると、堰を切ったように出てくる。

こうなるとリカバリーできない。


別に涙を流すことを許したわけじゃないのに!



夫を見ると、上を向いたりして涙がこぼれないようにしていた。

夫の方は、うまく馴染ませたようだった。