最後の握手(2ループ目・19枚)
これが最後。
何重にも折り返す列がどんどん少なくなっていく。
14人で連番。近くにいる仲間に
「泣くんでしょ?」
「もう泣きそう?」
と聞いては、自分の気持ちを他人で推し測ってみて。
俺は、俺はどうなんだろう?
泣きそう?
寂しい?
きっと寂しい。
行かなくなってしまった時期も長く、都合よく考える自分に呆れたりしながら。
でも、嘘はよくないよな。寂しいって思う自分を俯瞰で眺めようとしてみたり。
そして正直でありたい自分を見つけてみたり。
最後、何を話そうか。
初めて話をしたあの瞬間をはっきり思い出しながら、今日のこの瞬間までを何度も何度も思い出して。
大笑いしたことや、泣いてしまった彼女を見てしまった時のことや。
今考えれば下らないことなんだけど、あの頃は渦中にいることですべてを投げ出してしまったことや。
時間が足りない。
思い出して、どの感情を組み立てたらいいのか。
良いことを言おうとしてるな、と自分のあざとさに呆れる。
この期に及んで。
そうじゃないだろ。
最後の折り返し。
握手券をカウントしてもらいながら、すっと力が抜けてきた。
そうだよな。
何言うか、決まってるって。
カウントしてもらった握手券を手に、彼女の前へ。
「卒業、おめでとう。
若月佑美を好きになって、大好きになって本当に良かった。
後悔なく、今ここにいます。
もし良かったら今連番している仲間のことと、chikaってファンがいたことをふと思い出してもらえると嬉しいです。
今までありがとう」
彼女は笑って
「忘れるわけないよ。好きでいてくれてありがとう。これからもよろしく」
とぎゅっと手を強く握ってくれました。
あの笑顔で送ってくれました。
天井の照明を数秒見上げて、深呼吸して。
先に握手を終えた仲間のもとへ。
そして俺のあとに続く仲間の出てくるのを待ちながら。
やり切りました。
乃木坂ヲタク。
卒業まで、あと少しの猶予があるけど。
今日でちゃんと終えられます。
舞台があるけど。当たるかわかんないし。
先にお礼を言わせてください。
年齢、性別関係なく仲良くなってくれた皆さん、ありがとう。
下らない連番を笑って一緒にやってくれた皆さん、ありがとう。
遠征に一緒に行ってくれた皆さん、ありがとう。
ブログ、楽しんでるよって言ってくれた皆さん、ありがとう。
こんな俺に相談をしに来てくれた人、嬉しかったです。ありがとう。
ありがとうしか、出てこない。
寂しいは出てこないです。
涙は止まらないけど。
ありがとうしか、今はないです。