薬学で認知のことは学んだ。薬も。でもそれは知識として。自分のこととは思っていなかった。

しかし今徐々に知識と実体験が融合しつつある。

 

とはいってもどう向き合うのか、制度はどうなっているのかなど薬剤師でありながらわからないことだらけだ。今後もし介護認定されたらますます色々なことを初めて知っていくことになるんだろうなと思い、記録に残していくことを決めた。

 

今日は地域包括支援センターの人が来る日。

 

前の日に父には伝えておいた。明日10時に来るから家にいるようにと。

さっそく間違いをやらかした。一日前に伝えたことがだ。

 

10分前にまおを散歩に連れて行こうとしてた。

 

「ちょっと!もうセンターの人が来るんやから待っとかんね!」って言ったら、一瞬忘れてた顔してたのを私は見逃さなかった。

危なかった、直前に見ていてよかった。

 

地域包括支援センターの人二人きたら、父は人が変わったように饒舌に話し始めた。ボケた感じは一切なし。悪いはずの耳も聞こえてるみたい。頭もしっかり回って受け応えも問題なさそう。

 

何より一番驚いたのが、顔つきが全く違う。

私と普段話している時は、ああこれが認知なのかと思わせるような知性の光を感じない顔つきであるが、今はまったく普通の顔なのである。

 

これには非常に驚いた。介護認定されないんじゃないかと思うほど。

ただまあ、部屋の異常さを見れば分かるかな。

認定が終わるまでは、ありのままを見てもらおうと部屋は片づけないようにしてある。

 

センターの方二人と話しているのを側で聞いていた。

 

「お元気ですね~。特に困ったこととかないですか?」

「うん。どこもどーもないよ。」

「膝が弱そうって聞いたけど、どうですか?

「んにゃ、まったく何ともないよ」

 

う そ つ け !

 

普段ヨタヨタしてるやないか。何か腹立つわ~。

 

「どうもないけどね、ただ今生きていても面白くないね。」

 

まあそりゃ、テレビしか普段の趣味がなかったらね。面白くないでしょ。

 

「犬が死んだら自分ももう死んでもいいと思ってる」

 

ボケるくらいなら私もできるならそうして欲しいと思ってます。

 

「バイクも取り上げられて、趣味の釣りはできないし。」

 

あんたがやるべきこと(免許更新)やれてなくて、危険だからやめさせたんでしょーが。

 

「薬はこれですか?ベンズブロマロンとセンノシド?」とセンターの人。

 

「いや、今は飲んどらんよ」と父。

 

ん?血圧の薬飲んでなかったか?

「血圧の薬は?」

「飲んどらん。全然何ともないからな。」

「はあ?じゃあ病院は?」

「もう全然行っとらん。病院の先生がもうやめた。」

 

今わかった驚愕の事実。

病院の先生が高齢なのは知っていたが、やめていたらしく、それとともに放置していたらしい。じゃあかかりつけももうないのと一緒やん。

 

あきれた、一人にしといたら好き放題適当やってんな。

 

一通り話が終わると、父を外しセンターの方と面談。

 

「施設に連れて行って同世代の人と触れ合う方がいいんじゃないですかね」と。

 

まだ認定は下りてないが、認定されるとデイサービスを利用できると。

詳細はまた認定が下りてからですねということで、今後私の方でやるべきことを確認し、終了。

 

地域包括支援センターの人が帰った後、再び父の顔から知性の光が消えた。話しても回答が返るまで時間がかかる。

 

なんなんだ、これは。

他人の刺激が必要なのかな。