名もない鳥が
名もない小さな花をくわえ
少女の元へやって来た


名前を忘れてしまった少女は
名もない花を受け取り
作りかけの花冠に
編み込んだ


少女はにっこり笑い
花冠を頭の上へ


名もない鳥は
少女の頭上を
くるくる飛び回り
最後の魔法をかける


赤く透き通った光が
少女の頭から胸の中へと
行き届く


少女は大人になった
何処までも自由に飛んで行ける
大きな翼を手に入れてもなお
裸足で駆け回る
少女だった心のままで


何処までも見渡せる
広い草原

夜なのに明るい緑と
空の青さ


見上げた先に
うさぎの形をした雲を見つけ
手を伸ばす


名もない鳥が笑う


"その翼は何の為にある"


翼の使い方を教わった少女
雲のうさぎは優雅に空を泳ぎ
その回りで軽やかに飛び回る


名もない鳥は
赤い光の粒子を振り撒いて
空高く還っていく


"思い出しただろう?
自分の名を"