登園拒否の話③の続き

 

臨床心理士の先生との面談日までの間、息子が好きそうな自由保育メインの幼稚園をいくつか見学することにした。

 

息子とふたりでいくつかの幼稚園のホームページを見て、息子が見学してみたいと言った幼稚園に見学の予約を取った。

 

一つ目に行った幼稚園は、車で30分くらいのところだった。

カリキュラムがあまりなく、縦割りで泥あそびなどを思い切りさせてくれる幼稚園だった。

見学に行った日は雨で園庭で遊ぶことはできず、室内のあそびだけ参加させてもらった。

保育士さんたちは感じが良い先生ばかりで、息子もいろいろな教室に自由に出入りでさせてもらい、昔の遊び道具なんかもたくさんある環境が気に入り、楽しそうだった。

最後に、もう90歳近い園長先生に挨拶をした時、

「あなた、どこに住んでるの?」と聞かれ、住所を伝えると、

「わざわざここまで通えるの?あなたが!以前にここに拘って電車で通ってた人がいたけど?(変人扱いのような言い方)」と下から舐めるように私を見て言った。

 

それを聞いて「ここは無しだな」と思った。

 

また別の日にもうひとつの候補の園に行った。

ここは大本命だった。

なぜなら、転勤で長男の転園先を選ぶときに候補に挙がった園だったからだ。

ただ、ここは住んでいるところから少し遠く諦めたのだった。

ここも車で30分ほどだが、駐車場がなく車で送るには不便だった。

それでも、あとたったの2年間、息子のためならがんばれる!と思った。

この幼稚園は素晴らしかった。

遊具は全て手作りで木で作られていて、現代の幼稚園には少ないちょっと危なっかしいところやドキドキする仕掛けなどもあって、クリエイティブな道具もたくさんあって、からだを動かすこと、外で遊ぶこと、ものを作ることが大好きな息子にはど真ん中の幼稚園だった。

午前中はずっと各々の好きな遊びの時間。息子は本当に満喫して楽しんだ。

案内してくれた副園長先生は「すごく楽しそうですね。この幼稚園がとっても合ってるみたいですね!」と遊びの間もずっと付き添って息子のこともとても感心したり褒めてくれたりして見てくれた。

お昼の時間になって、教室の中に案内されたが、それまで本当に楽しそうに遊んでいた息子は、不安がって教室内に入ることができなかった。

園でのできごとや対応、様子をその園の副園長に話した時、すごくびっくりされて「とても信じられない。そこはちょっとやめた方がいいかもしれません。」とおっしゃり、園でのトラウマが強すぎて教室に入れなくなってることをすぐに理解され、見学はそこで終了となった。

 

息子はその幼稚園をいたく気に入り、帰り道に嬉しそうに「ここに入りたい!」と自ら希望した。

 

しかしながら、人気の幼稚園なだけに、この時点で転入枠は1席のみ。

実は前日にも一組の親子が見学に来られており、先着順なのでその方のお返事次第ということだった。

結局、そのお子さんが希望されたことにより、息子の転園の夢はかなわなかった。

それでもその副園長先生は、「確約はできないけど、キャンセル待ちされますか?」「他に何か彼にとって良い方法や、良い幼稚園がないか私も考えてみます」なんて優しい言葉をかけてくれた。

 

他に目ぼしい幼稚園はなく、振り出しに戻った。

でも、もう元の幼稚園には預けたくなかった。

もう幼稚園には行かなくていい。私が育てればいい。

それでも小学校には行けるはず!と自分を言い聞かせた。

それでも、やはり不安の波は行ったり来たり。

自分の判断が誤っていたら、、、という不安がよぎる時もあった。

 

そして待ちに待った臨床心理士の先生との面談の日が来た。

 

その臨床心理士の先生と会うのは、長男のチックの件に続く2回目。

「先生、ご無沙汰しています。その節は本当にお世話になりました。また我が家で...兄も弟も…。すみません。」と挨拶をすると、先生はやさしく微笑んで迎えてくれた。

臨床心理士の先生には、朝私との分離ができず泣き出し、その日から「うるさいから」と教室の外に出され放置されるようになり、それから幼稚園に行けなくなったこと、他にも同様の子がいたこと、それ以降の当方への園の提案や対応などを全て話した。

開口一番、もの静かで穏やかな臨床心理士の先生は声を荒らげた。

「フリーの先生たちは何をやってたんですか!!」

息子が外に出されている間、何もフォローがなかったことに驚かれ憤慨さえた。

園の対応には表情を曇らせ、幻滅していた。

そして「彼には、、、。ここは・・・やめた方がいい。彼にはもっと自由な他の環境の方がいい。」とおっしゃった。

他の園を検討しているも、見つからないことについて私が相談すると、

じっと私の目を見て「だいじょうぶ。」と言ってくれた。

何を聞いても「大丈夫。」と。

「でも、もし。。。」と思って、「今後もしまた何かあったら個人的に先生に相談できる機会はありますか?」と聞いた。

しかし、先生は「もうこれで終わり(引退)なの。だいじょうぶ!自信を持って!大丈夫!」と。

 

そして園に対しては「あとでこのことはちゃんと話します。」とおっしゃり、息子や私に対しては何一つ注意も指摘もなく、ネガティブなことはひとつも言われなかった。

 

そしてこの時、何度も相談をお願いしたにも関わらず、最後のプッシュの一回しか園はこの先生に伝えていなかったことが分かった。

もっと早くに相談できる状況だったのに、させなかった。

もっと早かったら親子でここまで苦しむことはなかったかもしれない。

 

最後に先生は玄関先で「がんばってね」と笑顔で送り出してくださった。

二度もこの先生に救ってもらって感謝しかなかった。

涙が止まらなかった。

でもやっと肩の荷が下りた気がした。

そして背中を押されて、自分たちは悪くなかった、間違ってなかった、と自信が沸いてきた。

 

翌朝、気持ちよく幼稚園に退園の旨を伝えた。

 

あの後、臨床心理士の先生から園に話があったのだろう。

副園長から丁重な電話が来た。

なんだかぐだぐだ言っていたけど、私はひとこと伝えた。

「色々ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。そしてご配慮いただきありがとうございました。最後にひとつお願いがあります。M子先生(副園長)から、彼に直接”あなたは悪くなかった”と謝罪をしていただけますか?」と。

 

 

つづく