1945年

ジョージ・オーウェル著

 

今まで読んできた小説の中で一番後味悪かったです。

しかもフィクションとは言えない...ってところがまた重い。

 

どこらへんがフィクションではないのか?

というのは最後に。

 

下記ネタバレを読んでいるうちに何とリンクしているのか、わかる人もいると思います。

 

タイトルの通り、人間に管理・酷使されていた動物たちが反乱を起こし、自分たちで理想の農場を目指す...っていう話なのですが...

 

以下超絶ネタバレというか内容

とても長文ですのでお時間あるときにどうぞ

 

小説自体はさほど長くはなく、読みやすいです。

 

出版社によって値段のバラツキが...

 

 

 

 
 
 
 
 
 

 

 

 

 

農場で尊敬されているメジャー爺さん(豚)は
我々の暮らしは悲惨な奴隷生活であること、全ての害悪は人間の圧政に起因していることを説く

同士諸君、反乱を起こせ!

動物たちは感化され、「イングランドの獣たち」を熱唱し、人間への反乱の準備をすることは自分たちの義務であると自覚するようになる。

そのすぐ後にメジャー爺さんは他界。

動物たちの中で豚たちが動物を団結させ教育するという役割につく。
そのなかでも特に頭のいい若いオス豚が二匹。

スノーボールとナポレオンである

そして話術に長けたスクィーラーという豚がいる。

この三頭がメジャー爺さんの教えを元にひとつの完全な思想体系、「動物主義(アニマリズム)」を作り上げた。


人間への反乱は思ったよりも早く成功し、逃げ出す農場主。

スノーボールとナポレオンは豚たちでまとめた動物主義の七戒を掲げる。


1.二本足で歩くものはすべて敵である

2.四本足、あるいは翼を持つ者はすべて味方である

3.動物たるもの、服は着てはならない

4.動物たるもの、ベッドで寝てはならない

5.動物たるもの、酒を飲んではならない

6.動物たるもの、他の動物を殺してはならない

7.すべての動物は平等である

これはこの農場にいるすべての動物たちが今後永遠に従わなければならない不変の法として壁に書かれた。

 

 

動物たちは農作業に勤しむが、豚たちは指示だけ出して作業をしない。

しかし彼らは知能が高いので自然な役割分担だと他の動物たちは疑問を抱かない。

 

作業計画の決議案が提出され議論される全体集会では決議案を出すのは常に豚たちだった。
他の動物たちは自分で決議を考え出すことは出来ないのだ。

 

豚たちは読み書きが完璧。犬たちも上手に読めるが七戒以外は読もうとしない。

 

最年長のロバのベンジャミンはどの豚にも負けないくらい上手に読むことが出来るが、

読むに値するものなどなにもないと、その能力を生かすことをしなかった。

他の頭の鈍い動物たちのため、スノーボールは七戒をひとつの格言にまとめる。

四本足は良い、二本足は悪い

 

頭の鈍い羊たちはこの格言が気に入ったらしく、何時間もメーメーと声を合わせて鳴いた。

 

ある日ナポレオンは産まれた子犬を母親から引き離し隔離する。

まもなく子犬の存在は忘れられていった。

 

牝牛が出す大量のミルクは豚が自分たちの餌に混ぜ、果樹園のリンゴも豚たちのものだと命令が下される。

 

平等に分配するべきという動物たちをスクィーラーは舌先三寸で丸め込んだ。

 

 

農場を取り戻しにやってきた農場主。

銃に撃たれつつもスノーボールが動物たちを率いて撃退する。(牛舎の戦い)

 

彼は「すべての動物たちは動物農場のため命を賭す覚悟をするべきである」と演説し、満場一致で動物英雄・勲一等が贈られた。

 

 

豚は明らかに他の動物より賢いのだからすべての政策は豚が決定すべきだという考えが全体に広まっていく。

 

ことごとく対立するスノーボールとナポレオン。

特にナポレオンは羊たちから人気があった。

 

風車の建設を提案し、難事業だが完成すれば労働が減り電気の恩恵も受けられると説くスノーボール。

 

それよりも食料の増産だと反対するナポレオン。

風車か食料か、農場は二つの派閥に分裂する。

 

風車を作るか否かの投票日の日、スノーボールの演説は動物たちの心を奪う。

もはや票の行方は疑問の余地がない。

 

そのとき突如納屋の中に踊り込んでくる9匹の獰猛な犬。

噛みつこうとする犬を間一髪でかわし外に飛び出すスノーボール。

 

彼は生垣の穴を滑るように通り抜け、そこでぷっつりと姿を消した。

獰猛な犬たちは以前ナポレオンが母犬から取り上げ隔離していた子犬たちだった。

 

スノーボール追放後、ナポレオンは決議の投票は無用として「集い」の日を無くすと宣言。

自らが議長を務め豚たちによる特別委員会で解決し、その委員会は非公開とすると。

 

反論の言葉がわからない動物たちの中、若い別の豚たちが抗議の声を上げるもナポレオンを取り巻く犬たちに唸られ黙り込んでしまう。

 

羊たちが「四本足はよーい、二本足はわるーい」と鳴き始めそれが長々と続いたため解散となり、議論の機会は永遠に失われたのだった。

 

 

その後スクィーラーは同士ナポレオンが苦労を背負ってくれたこと、スノーボールに従っていたらどうなっていたかと話して回る。

 

しかし「牛舎での戦い」で彼が勇敢に戦っていたのを見ている動物たち。

スクィーラーは「勇敢よりも忠誠と服従の方がもっとも重要だ」と説いた。

そして彼の牛舎での戦いでの働きは過大評価であった。とも。

 

スノーボール追放後、ナポレオンは風車を建設すると発表。

 

実は彼は風車の建設に反対していなかった。

あの計画はもともとナポレオンのものでスノーボールが盗んだのだ。

危険因子であるスノーボールを排除するために反対するフリをした。

 

等々、スクィーラーは説明する。

 

動物達は色々と質問をしたかったが、彼と一緒に来ていた犬たちが唸り声をあげたため出来なかった。

 

動物たちは風車建設のために奴隷のように働く。

自由参加の労働日はしかし参加しなければ食料の配給が半分にされた。

 

難航する風車の建設。

風車建設資金の調達に人間と取引をしようと言うナポレオン。

 

それは最初の取り決めに背くと動物たちは抗議するが、スクィーラーに丸め込まれる。

 

 

「指導者」の威厳にずっと相応しいという理由で家に住み始めベッドで眠る豚たち。

 

壁に書かれた七戒

 

4.動物たるもの、ベッドで寝てはならない...シーツをかけては。

 

動物たちは不思議なことにシーツのことに言及されていることを覚えていなかった。

しかし、そういうものなんだと納得するのだった。

 

 

動物たちは風車建設のために懸命に働き完成しつつある風車に熱狂する中、最年長のロバのベンジャミンだけは熱狂することはなかった。

 

11月の荒れ狂う嵐の夜の翌朝。

嵐によって風車は大破していた。

 

同士よ!これはスノーボールの仕業だ。見つけ次第死刑に処す。

と声高に叫ぶナポレオン。

 

冬の間も動物たちは雨が降っても雪が降っても作業を続ける。

しかし飢えと寒さで以前のような希望は感じられなくなっていた。

 

豚のスクィーラーは奉仕の喜びと労働の尊さを演説するが、動物たちは雄馬ボクサーの力強さや「わたしがもっと働けばいいのだ!」という止むことのない叫びの方がよっぽど大きな励みになっていた。

 

農作業より風車建設を優先していたために食料は不足。

 

ナポレオンは食料を買う資金を得るため、産卵期に入ったメンドリたちの産んだ卵を売るという契約を人間と結ぶ。

 

抗議すべく立ち上がったメンドリたちだが、彼はメンドリたちへの食糧配給を止め「穀物一粒であろうとメンドリに食料を与えた者は死刑に処す」との達しを出した。

 

メンドリたちは数日間抵抗を続けたところで降参し、その間に九羽のメンドリが死んだ。

そしてその死は病死として発表されたのだった。

 

嵐による風車大破を皮切りに、大きなことから小さなことまで、良くないことが起こるとそれはすべてスノーボールのせいにされた。

 

彼は初めから農場主とグルだった。

「牛舎での戦い」で彼が傷を負ったのも作戦の内である。

近隣の農場と結託し我らを破滅させようとしている。

 

豚たちが見つけたという秘密文書にはそう書いてあるらしいのだが、他の動物たちは文字が読めなかった。

 

 

以前、集会廃止に抗議しようとした豚たちが犬に喉笛を噛みちぎられた。

己の罪を告白したからだ。

 

卵の件で反乱を起こしかけたメンドリが進み出て、「スノーボールからナポレオンに背くようけしかけられた」と告白し、そしてメンドリたちも虐殺された。

 

ガチョウ、羊...告白と処刑は延々と続いた。

ナポレオンの足元に築かれる死屍累々。

 

それは農場主を追放してからついぞなかったことだった。

動物同士で殺しあうことなど。

 

動物たちは小高い丘に登り身を寄せ合う。

 

メジャー爺さんが「反乱」に駆り立てたあの夜に、自分たちが望んだ未来はこんな恐怖と虐殺の光景ではない。

 

空腹と鞭から解放され、平等な社会だったはずだ。

 

それが今では思ったこともハッキリと言えず、獰猛な犬がうろつき、同胞たちが衝撃的な告白をした後に八つ裂きにされる、そんな時代なのだ。

 

雌馬のクローヴァーはあの日の夜に歌った「イングランドの獣たち」を口ずさんだ。

他の動物たちも声を合わせて歌う。

それはあの日とは違いとても悲しげなものだった。

 

そこへスクィーラーが二匹の犬を連れてやってくる。

 

「同士ナポレオンから特別命令が出されました。その歌は今後、一切歌うことを禁じます」

 

七戒の六番目は

 

6.動物たるもの、他の動物を殺してはならない...理由もなしに

 

と書き加えられていた。

 

 

動物たちの心血が注がれた風車はとうとう完成し、それは「ナポレオン風車」と名付けられる。

 

それを壊しに来る人間。

ハンマーごときで壊せるか!怯むな同士たち!と鼓舞するナポレオンにロバのベンジャミンは結末がわかているかのように首を振った。

 

ハンマーで開けた穴に火薬をが仕込まれ、風車は土台から破壊された。

 

怒りに奮い立ち人間を撃退した動物たち。

勝利を祝う銃声が響く。

 

どんな勝利なのだ。

果敢に戦い撃たれて血を流している雄馬のボクサー。

 

スクィーラーは満足げに「我々の神聖な地から人間をおいだした」と言った。

 

しかし風車を破壊されたという彼らにスクィーラーは「だからどうだと言うんです?また建てればいいでしょう!」と返したのだった。

 

豚たちは果敢に戦った動物たちに少しばかりの食料を贈り、自分たちは地下から見つけたウキスキーで勝利を祝う。

 

その晩、豚たちの母屋からは禁止されたはずの「イングランドの獣たち」の歌声が聞こえてきたのだった。

 

七戒の五番目はこう書き加えられていた

 

5.動物たるもの、酒を飲んではならない...むやみには

 

 

近頃の動物たちの生活は厳しく、しょっちゅう腹を空かせ、寒さに震え、寝てないときは大抵働いていた。

 

それでも人間に飼われていた昔はもっと酷かったのだと、昔は奴隷だが今は自由だと。そう信じていた。

 

養うべき家族も増えた。ナポレオンの子豚たちはもっと増えた。

 

動物たちはナポレオンを讃え、動物農場の勝利を祝う自発的デモを週に一回行うように命じられた。

 

寒空の下長時間立たされる無駄な儀式、豚や犬のいないところでそう文句を言う者があれば、

羊たちは「四本足はよーい、二本足はわるーい」と騒ぎ出して皆を黙らせるのであった。

 

風車の戦いで負った傷が完治すると、雄馬のボクサーはまた熱心に働き始める。

 

通常の農作業に加え風車の再建、子豚たちの校舎作り……

 

引退して年金生活に入る前に彼は誰より早く起き誰より遅くまで働いた。

 

そして倒れた。

 

動物農場の規則により引退間近で年金生活が待っていた彼は、あと何年も生きられないかもしれないが余生は勉強に捧げると笑う。

 

動物たちがボクサーに面会できるのは 夜だけだった。

他の動物たちが労働している昼間の内に、豚によって荷馬車に乗せられるボクサー。

 

珍しく最年長ロバのベンジャミンがボクサーが連れて行かれると騒ぐ。

 

動物たちは作業を投げ出して荷馬車に集まった。

口々にお別れを伝える動物たちの中、激怒し地団駄を踏むベンジャミン。

 

ベンジャミンは文字の読めない動物たちに荷馬車に書いてある文字を読み上げた。

 

『廃馬処理業・獣皮・骨粉・犬用の馬肉販売』

 

仰天した動物たちが必死に止めるも、荷馬車は走り去っていく。

 

数日後、ボクサーは病院でありとあらゆる治療を受けたが亡くなったとスクィーラーは告げた。

 

豚たちはボクサーを業者に売った金でウイスキーを買った。

 

 

季節は何度も移り変わり、動物たちの短い命は次々と消えてゆく。

 

今やかつての「反乱」を覚えているのは雌馬のクローヴァーととロバのベンジャミン、数頭の豚だけ。

 

牧草地の一画を引退した動物たちのために使うという計画はずっと以前に白紙となり、引退した動物は誰もいなかった。

 

風車は建設されたがそれは発電には使われず、穀物の製粉に使われ多大な金銭の利益をもたらす。

 

完成した暁には今度こそ発電に使われると、動物たちはもうひとつの風車を建てるべく奴隷のように働いていた。

 

しかし畜舎が明るくなるだとか冬でも暖かく過ごせるだとか労働が減るだとか、かつてスノーボールが動物たちに語った夢のことはもはや誰も口にしない。

 

それは勤勉倹約に暮らすという動物主義の精神に反するとナポレオンが避難したからだ。

 

動物たちはやせ衰え、肥えた豚や犬の数ばかりがあまりにも多い。

 

 

ある夜、労働から戻って来た動物たちは中庭を見て恐怖に襲われた。

一頭の豚が後ろ足で立って歩いていたのだ。

 

母屋の戸口から行列を作ってぞろぞろと出てきた豚たちはみな、後ろ足で立って歩いていた。

 

そして堂々とした足取りで鞭を手に登場するナポレオン。

そのまわりを飛び跳ねる犬たち。

 

どんなことがあろうと不平批判を口にしてはいけないという習慣。

それであろうとも何か抗議の言葉が出てもおかしくない一瞬がやってきた。

 

しかしそのとき、何か合図があったかのように羊たちがメーメーと叫び始めた。

 

「四本足はよーい!二本足はもっとよーい!」

 

雌馬のクローヴァーは七戒が書かれた壁にベンジャミンを連れていく。

 

今回に限り、ベンジャミンは自分の流儀を破りクローヴァーに読み上げてやった。

 

7.すべての動物は平等である

しかし、一部の動物は他の動物よりももっと平等である

 

 

それ以後、豚たちが週刊誌の定期購読を申し込んだと知っても、ナポレオンがパイプをくわえて庭を散歩していようと、彼お気に入りのメス豚が絹のドレスを着ていようと、

動物たちはもはや不思議には思えなかった。

 

近隣の農場の代表団が農場の見学に来ても、草むしりをしていた動物たちは豚と人間どちらの訪問者も恐ろしいと顔を上げずに黙々と作業をした。

 

その晩母屋から聞こえてくる大きな笑い声やふいに湧き上がる歌声。

 

初めて動物と人間が対等な関係で顔を合わせているのであれば、いったいなにが起こっているのだろうか。

 

好奇心に駆られた動物たちは窓から中を覗き込む。

 

一同は興じていたトランプゲームを中断し、ジョッキに並々そそがれたビールで乾杯するところだった。

 

農場主の男がジョッキ片手に語る。

 

人間と動物の長きに渡った不信と誤解に今ようやく終止符が打たれたこと。

豚の皆様と人間の間においてはいかなる利害的な衝突もなく、両者はともに同じことに奮闘努力していること。

 

「あなたがたにも対処すべき下級動物がいるでしょう。

われわれ人間にも下層階級がいますからね!」

 

どっと笑う一同

熱烈な喝采

 

喝采が止み一同が再びトランプゲームに興じ始めると動物たちは音を立てずにそっと母屋から離れた。

 

しかし、20ヤードも行かないうちに母屋からわめき叫ぶ声が聞こえてくる。

 

動物たちは急いで母屋まで戻ると、中ではナポレオンと近隣農場主の男がそれぞれ同時にスペードのエースを出したことが原因で激しく口論していた。

 

怒鳴り声があがりテーブルをバンバンと叩く音が響き、鋭い疑いの眼差しが飛び交う。

 

その怒声はそのどれも同じで、動物たちは豚から人間へ、人間から豚へと視線を移した。

 

しかしすでに、どちらがどちらかを見分けることは出来なくなっていたのだった。

 

 

おわり

 

 

ナポレオンのモデル:ヨシフ・スターリン

 

スノーボールのモデル:レフ・トロツキー

 

スクィーラーのモデル:ヴャチェスラフ・モロトフ(スターリンの側近)

 

犬たちのモデル:秘密警察

 

ボクサーのモデル:ミハイル・トゥハチェフスキーや赤軍将校、または労働英雄

 

ベンジャミンのモデル:ロシアの知識人たち

 

メジャー爺さんのモデル:ウラジーミル・レーニン