↑の続きです

 

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और तीन साल बाद

そして3年後

 

 

「ヤマダ。煙草、付き合えや」

 

 

未練がましくグズグズとデスク周りを整理していた俺に部長が声を掛けてくれる。

あの時の課長は今は部長だ。

豪華な花束の入った紙袋をデスクの上に置き部長に続いて会社の屋上へと向かう。

 

 

「……あのっ、部長!今まで大変お世話になりました!その、俺、出来の悪い部下で色々迷惑もかけて...」

 

 

カチッと音がしてオレンジ色の空へ上る白い煙。

 

 

「ホントになぁ」

 

 

今日で俺は退職する。

あれから俺は熱心に仕事に取り組むようになった。社内での評価も上がって本社へ栄転の話も出たくらいだ。

でも心はインドに置いてきてしまったのだから、仕方がない。

部長に相談したときは馬鹿だの現実を見ろだのと散々な言われようだったが、こうして円満退職できたのは部長のお陰だ。

 

 

「インドに行くと人生変わるとよく言うが、変わったよな、お前」

 

「え?」

 

 

実際はまだ行っていないのだが、ポカンとしている俺に「ガンジスの水飲んで腹壊したんだろ?」と部長が笑う。

 

 

「部長ぉ~...っ」

 

「ま、頑張れや」

 

 

部長はスーツのポケットに手を突っ込むと何かを握り込んで「餞別だ」と差し出してきた。

何だろうかと椀状にした両手に、それはコロンと乗せられる。

 

 

「イエローサファイアだってよ。昔インドに行ったとき売りつけられてなぁ。俺も若かったな」

 

 

一度も身に着けてないから安心しろと言うがそんなことよりも!

 

 

「部長ってインド行ったことあるんですか!?」

 

「あ~?そりゃ、俺くらいの年代の奴は行ったことあるの多いんじゃないのか」

 

 

過去に日本でインド旅行ブームでもあったんだろうか?何かヒットしたインド映画でもあったのかなと、手の中の指輪を転がしながらそんなことを考えていれば「また行きてえな...」と部長が呟いた。

 

そのしみじみとした呟きに俺はハッと顔を上げる。

 

部長はインドでの思い出を懐かしんでいるのか。その思い出は楽しいものなのか苦しいものなのか。

空を見上げてる薄く湛えられた寂しげな笑みに胸が鷲掴みにされたように苦しくなる。

 

前にも...母親?元カノか?男の部長を見て女性のことを思い出すなんて変だ。

いや、ハッキリとは思い出せない。白く霞んでいて...

 

 

「...行きましょうよ、インド」

 

「やだね。俺はもう貧乏な生活なんてしたくねぇんだ。家だって建て替えたばかりなんだぞ?」

 

 

たしかその女性も貧乏で...その女性って...?

 

 

「...インドで、豪邸建てればいいじゃないですか」

 

 

部長は「馬鹿!」と俺の背中を景気よくバシバシと2回たたいて屋内へ戻る階段へと向かう。

 

 

「あのっ...!お世話になりました...!!」

 

 

指輪を握りしめて深く頭を下げる。

人生でここまで深く下げたことがないってくらいに頭を下げながら、手の中の指輪が消えていないかその感触を感じていた。

 

 

 

 

 

寝そべっている犬やボンヤリと川を眺めている人をすり抜け下へと降りていく。

その足がピタリと止まった。

 

何者かに唐突に足首を掴まれたかのような。自分の意志ではない何かが働いたかのような。

そんな不思議な感覚だった。

 

ゆっくりと顔を横に向けると、サフラン色の薄汚い布を巻き付けた男が足を組み目を閉じている。

 

インドでは別に珍しい光景でもなんでもないんだろう。

でも、目が離せない。

 

彼の周りは一段と深い静寂で包まれている。俺は膝を折って彼の足先に両手で触れた。

 

 

「नमस्कार, गुर्जी」

 

 

彼の手が頭上に翳される。

 

俺の 本当の人生が今始まった。

 

 

.完.

 

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お、終わった...!完結できた~!(^^)!

毎日更新しようって、連続テレビ小説のようにって。毎日更新できたぞ~

 

chat gpt先生の出番はあまりなかったよねぇ。

 

ちほら。先生の次回作もご期待(笑)ください!今度は短いの書きたい~

この創作意欲は一体...やっぱ秋だからなん??