↑の続きです
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バシィン!
突き飛ばされ背面ダイブで入水した俺の背を容赦なくガンジスが叩
よく母親にも「しっかりしなさい!」
「ぶわっっ きったね..!」
藻掻くように立ち上がった俺のクチに川の水が少し入ってしまった
聖なるガンガーを汚いなどとケシカラン!
...いま彼は日本語で話していただろうか?
「 पानी में सिर तक डूबो !」
頭まで水に浸かれだって...!?
...いや、今のは明らかに日本語でも英語でもなかった。
グズグズといている俺に痺れを切らしたのか、
「待ってって...!もぎゃっ!」
今度こそ俺は大量の水を口に含んでしまったのだった。
頭が痛い
目が霞む
とても強力なゴムに引っ張られているかのように重い体をどうにか
屋内と呼ぶにはあまりにも粗末だったが...
まさかあのまま流されたのだろうか。
緩慢に頭だけを動かして状況を把握しようとすると、
宗教に疎い俺でも女性が向き合っているのは祭壇だとわかる。
肌が青くて、額にも目があって、頭に三日月をのせている男の絵はヒンドゥーの神なのだろうか?
熱心に熱心に祈っている女性。
「......そんな熱心に信仰してるのに、貧乏なんだな...」
言ってしまった後であわてて口を噤む。が遅すぎた。
目を開けこちらを見やる女性の少し寂しげな笑みに胸が鷲掴みにされたかのように苦しくなる。
言葉は通じていないにしても最低なことを口走ってしまった。
恥ずかしさと申し訳なさと自己嫌悪でこの場所をすぐにでも出ていきたかったが、何のお礼もせずに出ていくのは気が引ける。
かといって金目の物は持っていないし...
頭を項垂れモジモジさせていた手に見慣れない物を見つけ、俺はそれを指から引き抜いてそそくさと祭壇に乗せた。
「あのっ...!お世話になりました...コレ、お礼です...!」
こっちの言いたいことがどれだけ伝わったかはわからないが、合掌して深く頭を下げる。
とにかく人生でここまで深く下げたことがないってくらいに頭を下げて、俺は吹けば飛んでしまいそうな家の外へと飛び出していった。
テロリロリロ テロリロリロ
「なんだよ……もぉ…」
重ダルい…
パタパタと動かす手にスマホが触れてノロノロと通話ボタンをタップする。
耳に当てる前に課長のつんざくような声が安アパートに響いた。
「ヤマダぁ!無断欠勤とはイイご身分だなぁ!?」
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ヤマダ!帰国したのか!?
ガンジスの水は腐らないと聞いたことがあるが...
続く!ここまできたら完成させるのじゃ