水木しげる先生が戦争経験者だということは有名ですね。
これも読みました。
総員玉砕せよ!
内容はタイトルの通りです。
最後の数ページ以外は極々淡々と描かれている。
戦争漫画にありがちな、親友が主人公を助けて死んだり、俺は何のために生きているんだ!!みたいな熱く苦悩する描写などはありませんでした。
淡々と。。。
それ故に最後の数ページはガツンと来ます。
そしてあとがきも。
一部抜粋させて頂きます。
この「総員玉砕せよ!」という物語は九十パーセントは事実です。
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軍隊で兵隊と靴下は消耗品といわれ、兵隊は猫位にしか考えられていないのです。
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将校、下士官、馬、兵隊といわれる順位の軍隊で兵隊というのは人間ではなく馬以下の生物と思われていたから。
ぼくは、玉砕で生き残るというのは卑怯ではなく人間としての最後の抵抗ではなかったかと思う。
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となりの地区を守っていた混成三連隊の連隊長は、この玉砕事件についてこういっていた。
「あの場所をなぜ、そうまでにして守らねばならなかったのか」
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死人(戦死者)に口はない。ぼくは戦記物をかくとわけのわからない怒りがこみあげてきて仕方がない。
多分死者の霊がそうさせるのではないかと思う。
水木しげる
そして足立倫行さんの解説で
水木先生がかつての戦地であったパプアニューギニアを訪れて撮影したビデオを延々と見せられるらしいのだが、
観ているうちに先生は興奮してきて
「ほら、ここ、ここに防空壕があったんです」
「そう、オウム!五十羽くらいオウムがいたんですよ、私の歩哨中に」
と、
すでに何十回となく見たはずの戦地巡りのビデオを初めて見るときと同じ情熱で繰り返し眺めていたらしい。
足立倫行さんの解説にて
ビデオが終わった後、水木氏はいたずらっぽい顔付で笑っていった。
「私、戦後二十年くらいは他人に同情しなかったんですよ。戦争で死んだ人間が一番かわいそうだと思ってましたからね、ワハハ」
そうだろうと私は深く頷いた
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水木しげるは何よりも、不条理な玉砕を生き延びたマンガ家なのである。
水木先生直筆のこの物語の構想ノートも見られます。