給食。
食べるものが如何様な物か知れ。
配給している合間に、生徒の一人が説明文を声に出して読む。
小学一年生から取り組んでもらう。
高校生になってもやっている。
12年間、素材に対する思い遣りを育めば、知識も相当なものになっていよう。
使われている素材。
その謂れ因縁故事来歴を謳ひ上げるこそ、めでたけれ。
人類史に始めて登場してより今に至る来し方を唸るばかりならで、
これより後の行く末に心配ること、学童をして将来の食事情に目覚めさせんや。
人、万物を殺めずして、自らの糧にすること能わず。
食せんが度、命の来歴に思ひを馳せ、自らの有難さを思ふべし。
同時に、祝詞・仏典・聖書も読む。
「たなつもの もものきぐさも あまてらす ひのおおかみの めぐみえてこそ」(玉鉾百首)
食べ物となる植物が育つのも、天照大神の恵みがあってこそだ。
「あさよひに ものくふごとに とようけの かみのめぐみを おもへよのひと」(玉鉾百首)
朝夕に食事を頂けるのも、食物の神である豊受大神のお陰だということを思いなさいよ。
学童よ、給食の時間は大いに楽しむが良い。
この果報者が。
しかし、神仏への感謝は忘れるな。
「いただきます」の前に、言うべきことを言え。
そうして明日は昨日よりも大きく賢くなって、寝床の中から跳り出して来い。私は私の役目をなし遂げる事に全力を尽すだろう。私の一生が如何いかに失敗であろうとも、又私が如何なる誘惑に打負けようとも、お前たちは私の足跡に不純な何物をも見出し得ないだけの事はする。きっとする。お前たちは私の斃れた所から新しく歩み出さねばならないのだ。然しどちらの方向にどう歩まねばならぬかは、かすかながらにもお前達は私の足跡から探し出す事が出来るだろう。
小さき者よ。不幸なそして同時に幸福なお前たちの父と母との祝福を胸にしめて人の世の旅に
登れ。前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。
行け。勇んで。小さき者よ。