以前のブログで本場結城紬にも種類がある事を書きましたが、今回はその一つの本場結城縮(ちぢみ)について書いてみたいと思います。


国の重要無形文化財に指定させているのは平織りのほうの本場結城紬です。(地機織りのみ)

これと、ほとんど同じだけれども、あえて緯糸に撚りをかけて風合いに変化をつけて織った縮織りというのがあります。本場結城縮と呼びます。


私はこの縮織りの風合いの面白さにも惹かれて研究しています。平織りとはまた違った魅力があって、重要無形文化財指定などにこだわらなければ、むしろこちらのほうが好きだったりします。


縮織りの魅力は何と言ってもその肌触りです。

新しい頃にはサラッとしたシャリ感があって、着こんで洗い張りするとこれまたびっくりする程に風合いが増します。サラッとしているのにやわらかいという独特の感覚です。

そして、洗い張りの回数を重ねるごとにふんわり感が増している気がします。洗い張りされた反物を比べた時に、平織りよりも嵩高があり、あきらかにふんわりしているのです。これはちょっとびっくりと言うか意外な結果で、『本結城は洗い張りを繰り返して風合いが増す、変化する』と言われるのは、重要無形文化財指定の平織りのほうではなく、縮織りのほうを指すのでは?と感じています。


①真綿からの手つむぎ糸を使用

②絣の柄付けは手くびりによる絣くくりの技法で行う

③地機(いざり機)での手織り


以上3つの条件は重要無形文化財指定の平織りのほうと変わりませんが、緯糸のみ縮織りは手つむぎ糸にあえて撚りをかける加工をして使います。この手間と加工にかかる分、平織りよりも手つむぎ糸を多く使用する分などもあり、縮織りのほうが平織りよりも高価になります。また、地機織りも強撚糸と無撚糸を交互に織るため複雑です。


以前、平織りのほうが重要無形文化財指定を受ける前には本場結城縮のほうが人気もあり生産が多かったのですが、指定を受けた事で生産数は逆転しました。

そして今では産地でもごくわずかしか織られていない希少なものとなりました。その少ない生産されているお品も無地や簡単な柄ばかりで、手の込んだ絣柄の本場結城縮というのは新品で手に入れるのはもう難しいと思います。


私は、少し凝った柄や面白い柄の本場結城縮が好きなので、そういったお品を集めていました。今では手に入らないような作品が、より風合いも育った状態で手に入るなら、本結城のリサイクル着物を選ぶメリットはそんな所にもあると思います。






ところで、市場に出回っている結城縮(ちぢみ)が全て本場結城縮ではありません。

例えば奥順さんの『はたおり娘』ブランドの結城ちぢみは本場ではありませんし、その他にも本場結城縮に似せて作られたお品が流通しています。


私がメルカリに出品する際には、本場なのかそうでないのかは必ず明記しますが、もしネットや店舗でも探されている方がいらしたらなかなか判別は難しいかもしれません。


それから、本場結城縮(ちぢみ)でも一枚一枚が着こまれた頻度や洗い張りの有無、柄ゆきによっても風合いが違ったりと、これまた奥深い味わいがあります。出品する際にはなるべく商品説明文で風合いについても分かりやすく伝えられたらと思っています。


本場結城縮(ちぢみ)は本当に魅力あるお着物です。既に重要無形文化財指定の平織りのほうを持っておられる方にも、次の着物として選んで欲しいですし、ぜひその風合いや肌触りを比べてみて欲しいです。


単衣にぴったりとよく言われますが、着こんで洗い張りをして風合いが変化した頃には袷で着られるのがぴったりなお着物です。


また近いうちにメルカリでご紹介させていただきますね。