まず、今回熊本を中心とする地震によって被災された皆様に、
心よりお見舞い申し上げます。
大きな余震が長い間続き、どんどんと被害が広がってしまい、心を痛めております。
何か私に出来る事は無いか、少しでも力になれる事はないか、と必死に考えており、
今回はまず『災害時の口腔ケア』についてお話したいと思います。
地震から命を守ることは、もちろん最優先事項ですが、
地震そのものから命を守れた後の、『震災関連死』というものをご存知でしょうか??
地震そのもの、例えば家屋の倒壊による窒息死や津波による溺死、これを『直接死』といい、
震災をかいくぐり、生き延びたにも関わらず、それ以外で無くなった場合、
例えば、肺炎、脳卒中、心筋梗塞などによるものを『震災関連死』といい、
『震災という特殊な事態が無ければ、助かった可能性がある死亡』と定義されています。
この阪神大震災の際に、震災関連死の中で最も多かったのが『肺炎』でした。
さらに、高齢者の肺炎の原因のほとんどが、『誤嚥性肺炎』です。
これは避難所の劣悪な食住環境や脱水症状、過度のストレスによる免疫が低下した状況で、
口腔内細菌を多く含んだ唾液を高齢者が誤嚥する事で引き起こります。
極端に水が不足していると、きちんと歯が磨けず、義歯の清掃不良が起こり、
最悪、死につながるケースが起きるのです。
そこで水が少ない時に、
コップ半分の水の量で出来る食磨きの仕方についてご紹介致します。
①歯ブラシを濡らして、普通に歯磨きをします。
②歯ブラシが汚れてきたらティッシュで拭き取ります。
これを繰り返します。
③最後にコップの水を口に含み、2~3回に分けてゆすぎます。
一度に含むより、分けた方が効果的に洗浄する事が出来ます。
また、歯ブラシがない場合は、歯や舌をティッシュやタオルで拭くだけでも効果的です。
必ず、入れ歯も毎日洗うか、ティッシュなどで汚れを拭き取って下さいね!!
更に唾液は、虫歯を予防する酵素を含み、
口の中の汚れを洗い流してくれますので、沢山分泌させる事が必用です。
顎下腺(耳の付け根の下)を優しくマッサージしたり、温めたり、ガムを噛む事で効率的に唾液を出す事が出来ますので実践してみて下さい。
震災の状況では、たかが口腔ケアと思われがちです。
しかし「口腔ケアによって避けられる死もある」ということを絶対に忘れないで下さい!
歯科医師として、被災者様皆様へのお願いです。
口腔ケアで救える命もあるのです。
追記:今回、歯ブラシ、液体歯ブラシ、うがい薬、デンタルフロスを被災地に支援物資として送らせて頂きます。
他にも足りない、届いていない地域の皆様、どうぞお問い合わせ下さい。
こんな小さなことしか出来ない自分がもどかしくなりますが、
こういう少しずつの個の力が集まりひとつになって、
被災地に大きな力となって届きます様に☆
一日も早く皆様が元の暮らしに戻れる日まで、応援し続けたいと思います。
櫻井千春