8月末になり、急に涼しくなった。
日中でも、窓を閉めて、ちょうどいいくらい。
つい先週まで、ジリジリ照りつける日ざしに、
もう蹴り出したいような、にっくき暑さだと思っていたのに、
こう急に涼しくなると、
なんだか、人恋しいような、もの悲しいような気分になる。
人の心のいいかげんなことである。
さて、日中のこと。
私が、壁の上のエアコンを見上げ、
「エアコンも、もう、使わなそうだなぁ...」
と、つぶやくと、
横にいた千春が、
「えっ、なに?」
と、聞き返した。
「エアコン。もう涼しくなったから、使わなそうだなあ、って」
すると千春はすかさず、
「もうつかわないからって、おかあさん、すてちゃだめだからね!」
と、こわい顔で、言った。
「エアコンを?捨てないよ!」
あははと笑う。
―エアコンモ、モウ、使ワナソウダナァ...―
千春、捨て魔のおかあさんによって、
エアコンも、自分の数々の紙工作と、
同じ運命をたどるものと思ったらしい。