みんなの妹 | 千春、6歳。あさひ、2歳。すこやか日記

千春、6歳。あさひ、2歳。すこやか日記

今日も会いにきてくれてありがとう

幼稚園の帰りみち。


「あさひー!あさひー!」


威勢のいい声で呼ぶのは、千春ではない。

千春の、お友だちである。


「あさひ、むかえにきたのー?」


そう言うとその子は、

ベビーカーに座るあさひに、覆いかぶさるようにして、

額や頬をくっつけている。


「いつから『あさひ』になったの?『あさひちゃん』でしょ」

お母さんがたしなめているが、

「いいよいいよ」と、私がその子に笑いかける。

「妹が、できたんだもんねー」


あさひにすりすりしていたその子は、

他の子たちがもう、帰りみちを駆けだしているのに気づいて、

「あー、まってー!」

と、急いで走りだす。

先を駆けて行く子どもたちのなかに、千春も混じっている。


千春はいつも、幼稚園から、4、5人のお友だちと一緒に帰る。

午後の光のなかを、歓声をあげながら、

競うように、駆けていく子どもたちの背の、

輝いてまぶしいこと、思わず目を細めたくなる。

私は、朝、千春を幼稚園へ送りながら、

穏やかにおしゃべりを楽しんだり、千春の上手な歌に耳を傾けたり、

そして、帰りには、こうして賑やかに、お友だちと帰ってくる時間が、

一日のなかで、いちばん好きである。

バス通園ではなく、徒歩で送り迎えの園にして、よかったと思う、

大切な時間だ。


お友だちとお別れする場所に来て、

「じゃあ、また明日ね」

と、親たちが言いかけると、お友だちがまたもや、

「まって!あさひにこちょこちょしてから!」

と、宣言する。

そして、あさひの、身体のわりに太いふくらはぎをにぎにぎし、

おなかをくすぐり、最後に両手でほっぺをむにーっとやって、

「またねー、あさひ!」

と笑う。

その子のその手は、先ほど、幼稚園から帰るまぎわに、

どろんこを触っていたのだが、まあ、それはそれだ。

あさひが、おねえちゃんと同じ大きさの子を、じーっと見つめる。



千春の妹、あさひは、こんな風にどこへ行っても、みんなの妹。

燦燦と、愛を受け、大きくなりそうである。