番外編12~不思議な日~ | 千春、6歳。あさひ、2歳。すこやか日記

千春、6歳。あさひ、2歳。すこやか日記

今日も会いにきてくれてありがとう

今日は、少し、不思議な日だった。


まずはじめに、新しく知り合ったお母さんと、友だちになった。

それも、偶然に、偶然が重なって、そうなった。


そのお母さんは、こちらに引越してきて、

まだひと月も経たない、とのことである。

さらに、話を聞いてみたら、そのお母さんは、

私の妹が住んでいる県から、越してきたということで、

その上、妹の子どもと、同じ月齢くらいの、

赤ちゃんを抱いているものだから、

気まぐれに、誕生日を訊いてみたら、

何と、妹の子と、同じ日に生まれていた。


それで、奇縁を感じ、そのまま友だちになってしまった。


そのお母さんは、一緒に話しているうちに、

どんどん、ほっとした表情になってきた。

何しろ、引っ越してひと月にもならない、見知らぬ土地で、

知人は一人もおらず、昼間は子どもと二人っきり、

スーパーをひとつふたつ覚えたくらいで、

小児科さえ、どこにあるのか、さだかに知らない、

という状況だったらしい。


まるで、昨年の夏の、私である。

私も、今の土地に越してきて、まだ10ヶ月余りなのだ。


「本当に、心細くて、ときどき何だか涙が出そうな感じで」

と言う、お母さんの話を聞いて、

「いつでも、連絡してください。できることは何でもしますから」

と、私は、頷いた。

私がこう言ったときは、本当に、できることは何でもする気である。

困っている人がいると、走って行って、助けたくなるたちだ。

時に、これが裏目に出る。


さて、最初に、「不思議な日」と書いたが、

今日の出来事は、これで終わりではなかった。

千春と一緒に出かけた児童センターで、

あるお友だちのお母さんと、たまたま会い、

「あら、こんにちは」となる。

しかし、このお母さんと私は、いったいどうなってるんだというくらい、

行く先々で顔を合わせ、1日に2度もばったり会うことが、

週に3度重なっても、もう驚かない、という、特殊な人なので、

今日も、「またですね」と挨拶して、一緒に、遊び始める。


その直後、私は、その児童センターで、知り合いのお母さんを見つけ、

「あら、こんにちは」

と、声をかけた。

その日偶然会った、二人目のお母さんだ。

1歳のお子さんがいる。


そして、部屋を移って、千春とままごとセットで遊んでいたら、

「あら、こんにちは」

と、声をかけられる。

顔を上げれば、先ほどとはまた別の、知り合いのお母さんである。

今日、三人目だ。こんなこともあるんだな、と思う。


さて、お昼の時間になったので、千春と帰ることにする。

と、児童センターの正門を出ようとしたところで、

「あら、こんにちは」

と、またしても、声をかけられる。

今度は、2歳の子がいる、知り合いの方である。

驚いた。今日は、4人もの知り合いと、ばったり会ったのだ。


ところが、家に帰って、今度は午後に、

千春を予防接種に連れて行こうと、自転車で走っていたら、

「あら、こんにちは、千春ちゃん」

と、とどめに5人目の、知り合いのお母さんが、

正面から、自転車でやってきたのである。


これには、つくづく、驚いた。


前述のように、私は、この土地に住んで、10ヶ月だ。

まだまだ、知り合いは、限られている。

今日は、5人の知り合いに、ばったり会ったと書いたが、

言い換えれば、いま、付き合いのあるお母さんの、

ほとんど全員と、一日のうちに、偶然出会った、

と言っても、大げさではないくらいなのである。

もちろん、こんなことは、この一年のうちで、

まったく初めてのことだ。


引越して日が浅く、心細くてたまらない、

去年の自分を思い出させるようなお母さんと、

知り合って、友だちになった日に、

私が、こちらに来てから出会った、ママ友たちに、

全員集合のように会った、というのは、

何だか、象徴的な出来事のように思えた。


この土地に来て、10ヶ月。

私は、自分でも気づかぬうちに、

ここで、少し、根を下ろしているのである。

食料品や衣料品を買うには、だいたいどこへ行けばいいか。

子どもの喜ぶ、遊び場所が、どことどこにあるか。

バッタはあっち、鯉のいる池はこっち、電車を見たいならそっち。

いろんなことを、いつの間にか、のみこんでいる。

何よりも、お互いに、子どもの話ができる、

お付き合いのあるお母さんたちがいる。


今日、会った、5人のお母さんたちの顔を思い浮かべてみる。

みんな、とてもいい方たちだ。

私は、引っ越してきてから、

あまり積極的には、していなかったように思うが、

それでも、こうして、いい方たちと知り合えた。

だから多分、まちがった道は進んでいないのだろう。



そして、こんな偶然が重なった、不思議な日の晩。

今日知り合った、一年前の私みたいな、あのお母さんが、

早く、今の私のように、のんびりと気楽に毎日を過ごせるように、

私にできる手助けをしてあげよう、と、考える。