ウンスが車にはねられたのは、事故ではなかった。
ウンスの所に記者を向かわせ、ウンスを泣かせ苦しめたのもこの女。
この女が、ウンスを苦しめ、
そしてウンスの腕を駄目にした・・・・。
俺は怒りで、周りが何も見えなくなっていた。
今、目の前に居るこの女を殺す事しか、頭になかった。
俺の異変に気付いて、俺に駆け寄り、俺の傍らに跪いていたチャン・ビンの身体を突き飛ばすと、
女に向かい走り込んでいた。
刀を大きく振りかざす。
キ・ヤンがそれを刀で受け止め、鈍い音がした。
支えられなくなったキ・ヤンが持っていた刀を落として、飛び上がり後方に下がった。
俺は逃すまいと、再び刀を構えてキ・ヤンに向かって行く。
キ・ヤンが腰から短刀を抜いて、応戦して来た。
だが、怒りで我を忘れている俺の刀に到底勝てる筈もなく、
その短刀も跳ね飛ばした。
「チェ・ヨン!自分を見失うな!!」
チャン・ビンが何か叫んだが、俺の耳には届かなかった。
キ・ヤンとの間合いを詰めていく。
キ・ヤンは両腕を前に構えて、素手で応戦しようとしていた。
間合いを詰めていると、キ・ヤンが一足早く前に出て、俺に蹴りを入れて来た。
俺はその足を大きく切り裂いた。
もう、刀の刃を反対に向け、生け捕りにするなど頭になかった。
俺の頭にあるのは、この女を殺す事。
それだけしかない。
太股を切り裂かれた女が地面に転がった。
俺は、刀を投げ捨て、その女に馬乗りになっていた。
そして、女の首を両方の手で力いっぱい締め上げていた。
「お前だけは絶対に許せない。お前だけは・・・。絶対に殺してやる。」
俺は、目の前の女にそう呟くように話していた。
キ・ヤンには、もう俺の声など聞こえていないかもしれない。
だが、そんな事もどうでもよかった。
「チェ・ヨン!!止めろ!!本当に死ぬぞ!!!」
チャン・ビンが俺に駆け寄り、俺を羽交い絞めにしてキ・ヤンから俺を引き離そうとしていた。
俺はその腕を払い、チャン・ビンの顔を殴ってその身体を跳ね飛ばしていた。
チャン・ビンの大きな身体が3メートル程飛んで、地面に落ちたが、そんな物を見る余裕などなかった。
気を失いかけている女の喉に、再び手を回して首を締めあげていく。
パーーーーン!!という、発砲音が響いた。
チャン・ビンのが空に向かい空砲を撃った音だった。
「その女が死んだら、お前は殺人者だ。手を離さないのであれば、俺がお前を撃つ。」
「この女が死ぬなら、どうなっても構わない!!邪魔をするな!!」
頭に血が昇っている俺に、怖いものなど何もなかった。
ここで、チャン・ビンに撃たれたとしても、この女だけは殺すつもりだった。
ウンスを悲しませるとか、全てを失うとかそんな事は全く頭になかった。
俺の手を剥がそうとする女の手の力が弱くなってきていた。
呼吸も浅く、唇も紫がかってくる。
チャン・ビンは俺の後方で銃を構えていた。
「女から離れろ!!俺は本気だ!!」
チャン・ビンがそう言って、拳銃を構える気配がした。
「チェ・ヨン!!止めろ!!
俺に引き金を引かせるな!」
俺は、何を言われても決して手の力を緩める事をしなかった。
チャン・ビンの言葉など、全く頭に入ってこなかった。
あと少し。
あと少しで・・・。
この女が・・・。
喉の骨がミシリと音を立て始める。
そして、パーーーーーーーン!と、一発の銃声がマンションの屋上に鳴り響いた。
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すみません(>_<)
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