さて2回目のワールドグルメ会。
第1回のウズベキスタン料理が口に合わな過ぎて「次は美味い物を食わさないと脱会する!」と会員共に脅された事から、今回は無難に美味しいブラジルのシュラスコに決定。
【勇気を持って珍しい国の料理を食らふ】と言う会のポリシーが早くも午後のファンデーションのように崩れ気味である。
ところでブラジルと言えば…
サッカーと
サンバ
で有名であるが、そこは凶悪都市サンパウロやリオに行ったことのある私。
ブラジルのいつ悪党に襲われるかわからないひりひりした緊張感にもこだわりたい。
どうせなら群馬大泉町のブラジル人街で、祖国のユニフォームを着たフーリガン予備軍に囲まれながらシュラスコを食べようと提案したのだが…
「え、群馬のブラジル人街!?何で?」
「フーリガンには会いたくない…怖い!」
「敢えて命を縮めるような行為をなぜしなくてはならないのだ?行きたいなら一人で行け」
と一蹴され、新宿のおしゃれレストランになってしまった。
そんなわけで今回のブラジル料理は貴婦人達が集うセレブ版である。
シュラスコとは…
鉄の串に肉のかたまりを刺し炭火でじっくり焼いたものをスタッフがテーブルに持っていき、客の目の前で豪快に削ぎ切りするブラジル料理。
レストランは大概ビュッフェスタイルでサラダやスープ、デザートが食べられる。
「わー、美味しそうなビュッフェ!いただきまーす!」
「ちょっと待ったー!」
飛びかかろうとした私達に、主婦Hが「ねるとん紅鯨団の告白タイム」のように待った!をかけた。
「いい?このビュッフェは罠。欲張ってしまうと後の肉が全然食べられなくなってしまう…葉っぱは少しにして高い肉をたくさん食べるのよ!」
なるほど、さすが計算高いベテラン主婦!
てかこの人は何回かこの店に来た事があるらしく、自身失敗しているのだろう(元々1番にビュッフェを山盛りにするタイプだし)。
その経験を生かし、鍋奉行ならぬシュラスコ奉行になったようだ。
奉行様のアドバイスに従い、サラダをちんまりと食べているといよいよ肉を持ったスタッフがやって来た。
「チキンとソーセージデス。いかがデスカー?」
いきなりチキンとソーセージ。
これは高級牛肉の前にお腹を一杯にさせる店の作戦…?
「そうよ、特にこのソーセージは一つだけでもお腹一杯になっちゃうの。今これを食べちゃダメ!敵の罠なんだから」
シュラスコ奉行様の言葉に頷き、ソーセージを「いらぬ!」とお腹空いてるのにパスする我々。
まさに武士は食わねど高楊枝…皆の頭にちょんまげが見える。
しかし店の巧妙な手口を知り尽くす彼女は我々にとってありがたいが、店からしたら今すぐ叩き出したい存在であろう。叩き出されなきゃ良いが。
「ピッカーニャ、いかがデスカ?」
「これは美味しいの。頂きましょう!」
奉行様からやっとお許しが出たピッカーニャ(イチボ)とは牛の腰から尻にかけての肉。ハート型でスライスしてもらうと源氏パイのよう。
「あ、ほんと美味しい!」
「柔らかいし、そのままでおいしいねー!」
「あらそうね、今日の肉はこのままで良いかも…前に塩胡椒だけで物足りなかったから私ステーキソース持ってきたのよー。使う?」
奉行様は屈託なくおっしゃいますが「家からステーキソース持ってくる」って店の味、全否定じゃないですか…。
この人、もう完全に店のブラックリストに載ってる気がする。いや、デスノートかも知れない。
そして真打ち登場。
「サーロイン!いかがデスカー?」
楽しみにしていた牛のフィレ肉!しかし食べてみると…
「あれ…なんか肉固くない?」
「固い!噛むの大変。野生の牛か!?」
サーロインなのにどうした事だろう…
固いのはED男性にとって理想だろうが、フィレ肉にとってよろしくない。
イチボの方が数段美味いとは…肉も男も実際に食ってみなきゃわからないものである。
続いてやってきたのは、焼きパイナップルや焼きチーズ。
パイナップルは思ったほど甘くなく、チーズは思ったほど濃くなく…
二つともさっぱり味。肉と肉の間のお口直し的存在かも。
それからグルグル回ってくる肉を張り切って食べていたが、とうとうお腹にも限界が…
臨月のようにはち切れそうなお腹を抱えると自然に息がヒーヒーハーになってしまうのは、子供を産んだ主婦だから?
しかしまた子供を産み落としそうなくらい苦しくてもデザートは別腹。
ブュッフェでブラジル独自のデザートを試す。
バンキッタ…お祭りで食べる伝統菓子。ぼろぼろこぼれるブラジル版落雁。きなこ食べてるみたい。
マラクジャムース…マラクジャとはパッションフルーツの事らしい。これは美味い、超好き!
ブラジルプリン…普通のプリン。どこがブラジルだったのか?
ビュッフェだから品数多すぎて、全部レポートできないが、めぼしいのはこんな感じ…そうそう、中にはこんなブラジル料理も。
チキンコッシーニャ…鶏ささみをマッシュポテトで包み揚げたブラジルコロッケ。日本のコロッケのようなザクザク感は無し。
フェイジョン…日本の味噌汁に喩えられる国民的豆スープ。優しい味で子供や病人に良さそう。
たらふく肉を食べ、皆大満足。
そういえばビュッフェにブラジルでよく食べたフィジョアーダは無かったなあ…などと言っていると、質問が。
「ところでブラジルで見た現地のシュラスコってどういうものだったの?」
サンパウロに行った時の様子を聞かれた私。
「もちろんこういうシュラスコの店はあるよ。けれどレストランはちゃんとお金持ってる人しか入れない。だからお金ない人達は路上でシュラスコをやるの」
「路上で?」
「車の中から見ててね、皆何を焼いて食べてるの?って運転手に聞いたの。そしたら…」
「そしたら…?」
「猫だって」
「猫ーーー!?」
皆やっと私がこの店を「セレブ版シュラスコ」と呼ぶ理由がわかったようだ。
ブラジルの光と闇。本物のブラジル料理を知るにはまだ遠い…。














