同性に好かれている男性って絶対信頼できると思うんです やはりそんな人が理想です

ジェイ・ジェイ切り抜き1986年

インタビューされる人
沢口靖子
1965年6月11日、大阪生まれ。
大阪府立泉陽高校卒業。「第一回東宝シンデレラ・スカウト」で選ばれ「刑事物語3・潮騒の詩」でデビュー。「澪(みお)つくし」のヒロイン役で日本中の茶の間を泣かせる。正月映画「姉妹坂」の三女・杏役も好評。秋封切りの「鹿鳴館(ろくめいかん)」では中井貴一の恋人役として出演予定。

デビュー後わずか1年。「澪つくし」のかをる役で一躍茶の間の人気者となった沢口靖子さんはとても人なつこくて気さく。緊張気味だった私たちを一気に和ませてくれました。男性からも女性からも好かれる若手女優No.1というのもうなずけます。今月はその彼女の魅力を同世代の私たちが解剖します。

今月のインタビュアー
鴫原さん(大学生)「同じ年の女のコとして、オシャレのこと、休日の過ごし方、理想のタイプの男性について、それに、もし女優にならなかったら何を大学で専攻したかった聞けたらと思います」

松尾さん(大学生)「『第一回東宝シンデレラ』に応募したきっかけや3万2千人のなかから抜擢されたときの心境。どんな女優を目指しているかなどを私は聞いてみたいと思います」


鴫原 テレビや映画で拝見するより、ひとまわりほっそりしていらっしゃいますね。

沢口 (大きい目をさらに見開いて)やっぱりそうですか!(と言ってから松尾さんのスーツに目をとめて)ワァーッ、私のと同じ!!サンローランでしょ?私、白を持っているんです。

松尾 え!本当ですか!


沢口 鴫原さんはピンクで…。私、今日このグレーを着てきてよかったわ。私もピンクが好きでよく着るんですけど、もし着てきたら色が一緒になっちゃいましたものね。

松尾 ところでいま「鹿鳴館」の撮影の
真っ最中と聞いてますけど、「鹿鳴館」って一口でいうどんなストーリーなんですか。

沢口 三島由紀夫さんの原作で、歴史に運命を引き裂かれてしまう二組の男女のラブストーリーなんです。でね、私は中井貴一さんの恋人役の公爵令嬢を演じるんですけど。

鴫原 映画館でスポットの予告を拝見しましたけど、すばらしい衣装ですよね。

沢口 ええ。「ローマの休日」でオードリー・ヘップバーンが着ていたようなね。ああいう普段はとても着れないような衣装を着れるのはうれしいんですけど、明治の上流社会のお話でしょう。すごくセリフが流暢で、星空のたとえを長くいれたり、「ございます」って言わなきゃならなかったり、その辺がむずかしいんですよ。

松尾 その点、京都が舞台だった「姉妹坂」はやりやすかったんじゃないです?

沢口 そうなんです。あれは小さいころ
使いなれた言葉でいけばよかったんでね。自分をのびのび表現できたんですね。私、標準語だとニュアンスながわからなくてなんか型にはまっちゃってクサイとか言われちゃう(笑)。ただかわりに「姉妹坂」は二人の男性から交際を申し込まれて迷う複雑な女のコの心を端々に表現しなくちゃいけなくて、そこがむずかしかったんですけど。



鴫原 二人の男性から愛されるという点では「澪つくし」も同じでしたよね。もし沢口さんが同じような立場に置かれたらどうすると思いますか。

沢口 もし二人とも同じようなタイプでね、どっちもいい人っていうんなら、やっぱり強引なほうにフラフラッていくかなって気もするんですよ。結局、「姉妹坂」の杏が後夜祭のキスで傾いたように。

松尾 ああいうラブシーンっていうのは、やっぱりかなり緊張するんでしょう?

沢口 ええ、台本をいただいてからその撮影までっていうのは「ああ、あるある」という感じですごく気になるんです。でも実際にその状況になってしまえば仕事だってわりきれるんですよね。

鴫原 でも役の上とはいえ、いろいろな恋ができたり、いろいろな人生が生きられるってすごく羨ましい気がしますね。やっぱり役柄から教えられることも多いんでしょう?

沢口 ええ、それは。台本を読みながらこういう人生もあるんだなあとか、こういうときはこうするべきなんだなあとか学ぶことってすごく多いんですよ。たとえば「澪つくし」では16~36歳までの女性の半生を演じましたから特にそうでしたね。

大阪の普通の高校3年生がシンデレラになるまで

鴫原 「東宝シンデレラ」には新聞広告かなにか見て応募なさったんです?

沢口 いえ。私は全然そんなオーディションのことは知らなくて、しかも高3でしたから最初は受けにいくなんてまったく頭になかったんです。でも、友達が推薦してくれて履歴書や写真も彼女が出してくれたんですよ。

松尾 3万2千人のなかから選ばれたときの心境ってどんなでした?

沢口 私はこういう世界というのは、小さいころからお芝居の勉強をやってるコたちが入るものだと思ってましたから、ああ、うれしいなっていうよりも私がやっていけるのかなって不安な気持ちのほうが大きかったですね。特に東京だとモデルさんのアルバイトをしている高校生もたくさんいるようですけど、大阪の私のほうではそういう人も全然いませんでしたから、芸能界っていうのはまったく別に世界というか曇の上の世界という感じで、なんかとても複雑な気持ちだったんです。

鴫原 お家の方の反対にはあわなかったんです?

沢口 父や母も私と同じ考えで、やっぱりそんなね、娘が女優になれるわけはないという…ただ、最終審査に行くか行くまいかでもう一カ月間、家族じゅう悩んでたんです。というのは、それがあったのが1月29日なんですけど、共通一次(試験)も一応受けることになってましたし、1月29日というともう短大の入試の直前でしょう。そんな時期に東京に一泊して審査を受けにいくからにはそれなりの覚悟が要ったんですね。でも最終的に、じゃあせっかくここまで来たんだから受けてみようって家族の意見が一致して上京したものですから、もうシンデレラに選ばれた時点では誰も反対はしませんでしたね。


鴫原 そして高校卒業を待っていよいよ女優になるために上京されたわけですね。

沢口 そうなんです。忘れませんけど、大阪駅の新幹線のホームに両親とか友達とか送りに来てくれたんですね。そのときやっぱりすごい別れが悲しくて涙が出てね。もうね、一度東京へ来たらいろいろ習い事が厳しくて2年は大阪へ帰れないだろうなって思ってたんですよ。そしたらなんのことはない。仕事でしたが、すぐにまた大阪へ帰ったんですけどね(笑)

松尾 で芸能界って想像どおりに厳しい別世界でした?

沢口 いいえ。すぐ「刑事物語3・潮騒の詩」の仕事へ入ったんですけど、スタッフ50ぐらいと同じホテルに約1カ月泊まって、なんか修学旅行気分ですごい楽しい感じだったんです。全然特別の世界っていうんじゃなくてね。で、芸能人になると妙読みスケジュールになるとも聞いていたけれどそうでもなかったし、あと
オーディションに選ばれたときに審査員だった武田鉄矢さんからいただいた言葉が「華やかなのはここだけで、あとは地味な生活だよ」だったんですね。そしたら本当にそのとおりで。

松尾 じゃあシンデレラになる前と後と、沢口さんご自身もほとんどお変わりない…。

沢口 ええ。事務所としても、そのまま地でいきなさいって言ってくれるから全然変わったということはなくて、本当にいい会社だなって安心してるんですよ。

観客に素敵な夢を見せてあげられる女優になりたい

松尾 でも、ときにはお友達と同じように大学生になってたらなあなんて思うことはありません?

沢口 そうですね。「澪つくし」でNHKへ通っていたころ、渋谷って大学生が多いでしょ。なんとなく楽しそうに見えるんですね。それで、もし私も大学生になっていたら、あんなふうに歩いていたのかなあって気持ちはありました。お二人はどんな大学生活をなさってるんです?知りたいなあ…。

松尾 私は音楽大学なんで1日に自分の練習の時間を何時間もとらなきゃいけないんです。だから、私も沢口さんと同じでね、渋谷あたりで普通の大学生を見ると羨ましいなって思うんです。

鴫原 私は欧米文化研究科というところで英語やアメリカとかの歴史を中心に勉強してるんですけど…。

沢口 へぇーっ。でももうご卒業ですよね。どうなさるんです?

鴫原 日本航空のスチュワーデスに…。


沢口 へぇーっ。スチュワーデスって私も憧れてたことありました。でも、いざ高校ぐらいになるとすごく現実的に考えません?それで英語がすごいたいへんだって聞いて遠ざかったんですけど。へぇーっ。

鴫原 もし大学にいらしてたら沢口さんは何を勉強なさりたかったです?

沢口 あのね、私は小さいころから書道が好きだったんです。それで書道の先生もそっちのほうに進まないかって勧めてくれたんです。あの、資格を持っていれば会社へ入るときでも有利だろうってことで、そういう大学を一応先生にも検討してもらってたんです。でもいまはね、この仕事ですごくよかったなって気持ちがあるんですよ。私のお芝居を見ても喜んだり泣いたりしたっていうようなお話を聞くと、いいお仕事をしたなって思いますから。


松尾 こんな女優さんになりたいっていう目標はあります?

沢口 映画っていうのは現実を忘れさせてくれる世界でしょう。だから、画面のなかだけでも、ああ、こんなステキな人になりたいなって思ってもらえるようなね、そんな女優になりたいと思います。だから、昔の映画のように夢があるステキなラブストーリーとかに出たいなって思います。

松尾 沢口さんというと吉永小百合さんの再来ってまわりの期待も大きいですよね。そのことについては、沢口さんはどう思ってらっしゃいます?


沢口 でも私は吉永小百合さんってあんまり知らないんですよね。「天国の駅」とか「おはん」は見ましたけどお若いころのシリーズは知らないんです。ただ、テレビに出演なさっているのを最近意識して見たりすると、たいへん感じのいい方で大スターになられたのがすごく納得できるんですね。だからそういう方に似てるって言われるのはすごくうれしいと思います。私も吉永さんのように思われる人になりたいって気持ちはあります。でも、私の演技はまだまだ「うっ、大丈夫かな、助けてあげたいな」って人に思われちゃうみたいなんですけどね(笑)。

「澪つくし」のかをるのような生き方が
したいですね

沢口 お二人ともきれいにお化粧なさって私より上手。私いつもヘアメイクさんにやっていただくから自分でできないんですよ。だから今朝はたいへん。直接自宅から来ましたからね。髪も自分でしなくちゃいけないし、1時間ぐらい早く起きたんですけど、うまくできなくて焦ってね(笑)。高校のころはもっとマメにブローしてたんですけど。

鴫原 セミロングがとてもお似合いですけど、デビューのころはショートカットでしたよね。

沢口 そうなんです。聖子ちゃんカットが流行っていたんで私もショートにしてね。

鴫原 やっぱりオシャレにはすごく関心
があるほうです?

沢口 そうですね。ショッピングとか大好きですしね。きのうもお休みだったんでデパートへ行ったんです。まだバーゲンをやっている所もあったんでグルグル回ってたら、あっという間に4時間もたっていてね。



松尾 エーッ、沢口さんみたいな方でもバーゲンに行かれるんです?

沢口 私、バーゲンって好きですよ。

松尾 変装されて行かれるとか…。

沢口 しませんよ。だからお店の人にサインを求められたりしてね。きのうもね、ちょっと気に入ったバッグがあったんですけど迷ってね、「また来ます」って言って逃げてきちゃった(笑)

松尾 そう言えばこの間「三枝の美女対談」でよくトイレの掃除をなさるっておっしゃってましたよね。

沢口 ええ、いまは下宿なんでしてませんけど、大阪にいるときはやってたんです。というのは、母がね、トイレの掃除をマメにするとカワイイ女のコが生まれるって言われてよくやってたんですって。で、「あなたもやりなさい」って言われてね。やっぱりいちばんきれいにしなくちゃいけないところだから、私もいいことだなって思ってやってました。

鴫原 ワーッ、見習わなくちゃ。ほかに家事はなにかなさってました?

沢口 高校のころって家庭科で習ったものを作りたくなりません?うちは母がね、洋裁の仕事に出かけていたんで今晩は私が作るとか言ってやってました。でも1回カニクリームコロッケに挑戦したとき失敗してね。固まらないんですよね。で、結局10時ごろ母の作った他のものを食べたんですけどね(笑)。あとクッキーを焼くの流行りませんでした?うちは場所をとるってオーブンを買ってもらえなかったんで、かわりにオーブントースターでがんばって焼いて、よく学校へ持っていったんですよ。

松尾 お話を聞いていると沢口さんってとってもカワイイお嫁さんになりそうですね。
 
沢口 そうですか。ありがとうございます。

鴫原 結婚はいつごろしたいです?

沢口 20代のうちにはしたいですけどね。でもまだいまのところね。この間、成人式を迎えたばかりですし…。

鴫原 どんな方が理想なんです?

沢口 同性に好かれている男性。私、同性に好かれてる人って絶対信頼できると思うんです。芸能人だったら中村雑俊さんのような方。そうですね、いい方がいれば「澪つくし」のかをるのように、どんなことがあってもひとりの人への想いを貫き通す、そんな生き方がしたいですね。