沢口靖子
好感度 クローズアップ
ジェイ・ジェイ切り抜き1986年6月号


けっして派手なイメージではないけど、やっぱり目立ってしまう。
沢口靖子 20歳。
〟個性を売りものにしない個性〝が注目されています。いま、沢口靖子なのか…


テレビやポスターで見るよりも、実物ははるかに幼く見えた。中学、高校とテニス部で鍛えたとは思えないほどきゃしゃな手足、小づくりな顔にもかかわらず、彼女がいるだけで、周囲が突然華やいで見えてくるから不思議だ。
「ビューラーってあるでしょ。あれをデビュー作のとき、生まれてはじめて使って、すごく怖かったんですよ。まつ毛が抜けちゃうんじゃないかと思って。高校時代はザバザバと顔を洗ってクリーム塗る程度。お化粧なんてしたことなかったから。色もね、クラスで黒いほうだったのに、こっちへ来てから仕事仕事で焼ける機会がなくて、みんなに白い白いと言われるから不思議な気持ちがします」と、言いつつ真剣な表情でビューラーに取りかかった。もう2年も女優をやっているというのが信じられないくらい、手つきが初々しい。


「私、やっぱり、フツーっぽい感じに見られたいんですね。自分のことも女優だ女優だ、と思うんじゃなくて、フツーの人間でいたいんです。だから、はじめて会った人に〟なんだ、会ってみるとフツーの感じだね〝って言われると、すごくうれしいんです」
フツーの女のコが女優になり、〟あれっ〝と思っている戸惑いを飾らずに見せてくれる。
「いまいちばんのんびりした気分に浸れるのが台所に立つとき。スパゲッティのボンゴーレでしょ、ハンバーグ、カボチャのポタージュ、それにチーズムースとかババロア…」
楽しそうに指を折り折りレパートリーを披露してくれた。
「おそらく母も、私がフツーの娘としてフツーの学校へ行き、当たり前の結婚をしてくれたらと思っていたと思うし、私自身、女優になったといっても、いざ結婚したらその男性のために尽くせる女性でありたいと思うんですよ。でも、それって突然やろうと思ってもできないでしょ。だから、いまのうちからせめて自分の身の回りのことはきちんとできなくてはいけないと思って、部屋のお掃除や整理整頓とかやるようにしています」

〟元気〝っていう言葉が好き。おしとやかなタイプに見られがちだが、私は絶対に活発な性格だと思う、と自己分析。

彼女に尽くせされる男性とはどんな男性か興味のあるところだが、「結婚というもの自体がまだまだ先のことなのでわからないけど、タイプとしては包容力のある人がいいです。ちょっぴり強引なところもあってほしいし……」
〟強引さとしつこさは紙一重〝と冗談めかしで言うと、「強引っていうのは、しつこいのとは違いますよ」とムキになった。
「なんというか、男の人ってパッパと決める、たとえば○✕で選んじゃうようないさぎよさってあると思うんですね。私の言う強引というのは、自分の考えがガチャとしてて、俺についてこいというような…」
10年後、はたして理想の男性を見つけて
尽くす夢を実現しているのだらうか。
「だといいですね。30歳の自分って想像できないけれど、たとえいくつになっても可愛い女でいたいなと思うの。年とったから年相応の服を着るというのじゃなくて、いつまでも自分らしさを出していきたいし。この前、アグネス・チャンさんとお会いしたら、30歳すぎているのにすごく可愛い方なの。外国映画に出てくるような大人の女もいいけれど、私はいくつになっても可愛いほうがいい」

最近、急激に増えている小・中学生の自殺には批判的。たとえ何があっても、自分の生命は最後まで大事にしたいですね、と語る。

そういえば、とかすかに眉を曇らせた。
「最近、週刊誌を見ててびっくりしたんですが、ラブホテルから出てきて2人の写真を載せてるんですよ。それがつき合いはじめて3カ月とか、その日会ったばかりとかね。信じられます?みんな自分を粗末に扱いすぎてると思いますね。古くさいかもしれないけれど、処女性って、私、すごく大切なものだと思います。私は、一生この人だなと思った人としかできないんじゃないかと思う」
20年前の吉永小百合ところことあるごとに比較される沢口靖子だが、かすかに金属音が混じったような耳に心地よい声は、確かに吉永小百合と同質の声音だった……。

お母さんの作る洋服が好きって言いきる自信あなたにあります?
あくまでも端正な顔立ち。まるでこわれやすい人形のよう。でも、彼女だって20歳の女のコとしての普通の生活があるはず。まじめな生き方や考え方、やっぱり共感できますよね。

自分の顔で好きなところはどこ?
(パッと顔を輝かせて)目が好きです。そのかわりにすぐ目に出ちゃうんですね。落ち込むと目が死んじゃうというか、曇ったような目になるというか……。ほかにはね、笑顔が好きです。笑った顔のほうがいいなって思うの。

コンプレックスはあります?
コンプレックスではないけれど、すっごく冷え性なの。いつも手の先と足の先が冷たくて、冬なんかちょっと寒いところへ行くと、もう大変。それに低血圧なんです。だから朝はあまり元気がなくて、本領発揮はお昼から(笑)

反抗期なんてあったです?
ないです。(しばらく考え込み)なかった。珍しいですか。でも私からすれば、別に反抗するような理由がなかったから。逆になんで反抗期があるのかなって不思議。親になんでも隠しだてしなかったですからね。

あなたにとってお母さ様はどんか存在?(即座に)友達。学校へ行ってたとき、なんでも母には話してて、お洋服買うときもいつも一緒だったし。友達であると同時に相談相手でもありましたね。聞くのが上手というか、いつも聞き手になって助言してくれるのね。

もし女子大生になっていたら?
あの、高校時代はね、クラブ活動であんまり遊べなかったというか、練習練習で夏休みもなかったんですよ。大学ではサークルへ入ってコンパとか行って、バイトして北海道へ旅行してなんて、夢はもってました。

いちばん大切にしているものは何?
写真です。母が撮ってくれたアルバムが15冊くらいあるんです。生まれて2週間めぐらいから毎月決めて撮ってくれたんですが、1枚1枚に日づけとメモが書いてあって、何ものにも代えられない財産だと思っています。


好きな色は何です?
ピンク。なんでだろう?小さいときからピンクが好きで、いろいろな色のものがあっても最終的にはピンクを選んじゃうの。洋服でもなんでも。それに、結局ピンクがいちばん似合うの、私の顔に。

最近、ビックリした経験は?
それがね、ボーッとしてるときがあるんですよ。で、よく落としたものとか忘れものとかしちゃって「あれ、どこへいったんだろう」なんて。この前も電車の棚に買った物を置いてウォークマン聞いてて…やりました!


もし女優になっていなかったら?
小さいときには、保母さんとかスチュワーデスに憧れてたんです。でも、高校の進路選択のときには、現実的になっちゃって。資格の取れる大学へ進んで勉強しながら考えようと思ってました。なるとしたら書道の先生かな。

外国で行ってみたい国はどこです?
え~と、ニュージーランド。それからね、アメリカのディズニーランド。遊園地が好きなんですよ。だからやっぱり本場へね。少し前までは東京ディズニーランドへ行きたい行きたいって言ってたの(.笑)。

間違ってフォーカスされてしまったら?
嘘だというのはわかっているし、聞き直るしかないでしょうね。なんというか……プライバシーの侵害ですよね。本当にヤダな。お友達でも男性だと食事もできない。この仕事してて、その辺がかたくるしいなと思います。


特技は何です?
書道ですね。小学校に入ったころ、母に教えてもらったんですが、よく市展とかに入選したんですよ。書道って、音楽かけながらでは書けないし、お手本と同じように書こうと思ったら、素直にならないとダメなんです。

暇なときのお気に入りの過ごし方は?
最近ね、またテニスを始めたんです。だからテニスをしているときと、あと家で好きな音楽を聴いているときかな。安里、ユーミン、聖子ちゃん(松田聖子)、安全地帯、マドンナ、シーナ・イーストンなんかよく聴きますね。

モットーにしていることは?
いまは、毎日毎日、人間てしての基本を呼吸しているときだと思うんです。この状態に馴れてしまったらダメでしょ。だから自分のなかで馴れとか甘えの気持ちが生まれないよう、それだけは戒めていますね、ウン。


高校時代の生活拝見両親の愛に包まれたくつろぎのひととき


どれも高校時代のスナップです。自然な笑顔が印象的。彼女の高校生活について、いちばん身近な相談相手だったお母様、沢口八重子さんに語っていただきました。

●高校生活のひとコマを再現
学校では「サワ」と呼ばれていました。共通一次を受験しようとしていたので、テレビもあまり見ませんでした。勉強時間を決めたいから夕食は7時にして、と自分から言い出したりして。家庭科で洋服などを作るときも、すごく時間をかけて、几帳面に作ってました。友達も多くて、毎日いきいきしてましたね。男のコに望遠カメラで写真を撮られる、ということもときどきあったようです。でも、高校2年くらいだったでしょうか。あの子が学校の帰りに、友達とハンバーガーを食べていたらしいんです。そしたら、下級生の女のコに、〟へぇー、沢口先輩があんなものを食べとる、意外やねー〝とか言われたらしくて、半泣きになって帰ってきました。「私はみんなと同じなのに」って言いましてね。

ひとことで言うと、女のコらしいやさしい子なんです。街で赤ちゃんなんか見かけると、「触ってもいい?」ってほっぺなんかなでてるんです。
時間があると、マフラーやセーターを編んだり、フェルトでお人形さんを作ったりしていました。私が作る服も、イヤと言ったことがないんです。お兄ちゃんがちょっかいを出しても、けんかするのが嫌いで、いつもニコニコしてたんですよ。(母より)