
ジェイ・ジェイ雑誌 1989年4月号
●22歳のフリートーク
鈴木保奈美
キャンパスの顔 女優の顔
1966年、鎌倉育ち。成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科在学中。
「ノンちゃんの夢」以来女優のおもしろさに開眼。趣味は映画と読書で、高校時代から村上春樹のファン。今は吉本ばななにのめり込んでいる。

「ホリプロタレントスカウトキャラバン」に応募したのが4年前。高校3年生の夏だった。
みんなが受験勉強に精を出している夏休み、自動車教習所に通いながら、その一方で、あくまで自分の意志でタレント登竜門に可能性をぶつけてみた。
その結果は、特別賞に選ばれ、芸能界への道が開かれただけでなく、車の免許も所得。おまけに、予備校、塾とは無縁だったにもかかわらず、大学にも合格。と、彼女に限っては高校3年は、灰色どころかバラ色づくし。

「私、スチュワーデスとか、通訳、精神科の先生になりたかったんです。女優さんとか、歌手なんかもみんなが憧れる程度には夢見てましたけれど、夢以上のものではなかったんですね。それが、高校3年になった頃から、何か残るものがほしいなと思うようになって。例えば、鈴木保奈美さんという人がいて、その存在証明になるものは何かと考えたら、女優なんていいんじゃないかなと思ったわけです。」

もともと目立つことや、人に見られることが好きで「女優という仕事は、スチュワーデスにも、精神科の先生にも、私がなりたいと思っていた仕事が全部できるわけです。もちろん役の上ですけれど。それが魅力だったし、自分が生きていたという事実をいちばん残せる仕事のような気がして」
臨床心理学に興味を持っているというだけあり、自己分析も単刀直入でなかなか気持ちがいい。
「なにしろ獅子座でA型、ウマ年ですからね。気が強くて、わりと寂しがり屋ですね。それでいて、人にチヤホヤされていないとイヤで、かといって、寂しいからといって自分から仲間を探さないタイプですね。結構人見知りもしますし」

大学2年の夏、「’86年カネボウサマーキャンペーンガール」に選ばれ、その後ドラマの仕事が増えはじめ、昨年のNHK 朝のテレビ小説「ノンちゃんの夢」の準主役、「君が嘘をついた」で、すっかり女優サンらしくなった。
「両親は最初のうち、女優も学生のアルバイトで終わるだろうと思っていたらしいんですが、今の私にとっては生活の99.9パーセントが仕事。特に去年の秋ぐらいから、本当の仕事のおもしろさがわかってきて、今が気分的にもすごく楽しい状態なんです」

しかし、仕事が忙しくなればなるほど、学業との両立が難しくなるのが道理というもの。一般教養課程の授業日数が足らず、結局はダブルで(4年がかりで)、この春から3年生に。
「去年までは学校がすごく楽しかったんですが、留年して友だちがいなくなっちゃって。今はひとりで行って、ひとりで授業を受け、ひとりで帰ってくるという風なので、学校に行くほうがかえって緊張しちゃうんですよ」

最近も、久しぶりに学校へ行くと、翌日シメのレポートが2本あると知り、大慌てで分厚い本を2冊読破し、夜明けまでになんとかレポートを2本仕上げたと、その様子をおもしろそうに話す。
「わりと小さい頃から、とりあえず大学へは行くんだみたいなのがあって、特に私の場合は勉強をしなくていいのなるとまったくやらなくなるタイプなんです。だから、まだ知らないことが自分にはあって、それを知ることのできる場所があるんだからやってみようと。卒業も、入ったら出るのが当たり前だと思うんですよ。途中でやめたら悔しいだろうし、あと10年、20年経ったときに後味が悪いんじゃないかなと思って」

ジェイ・ジェイ1987年4月号 定価530円
女優として仕事をしているときも、学生としてキャンパスを歩いているときも、鈴木保奈美は鈴木保奈美。
「2つの世界があるからといって、どちらかをどちらかの逃げ場にするのはイヤ」と、その辺は明確に割り切っている。

ジェイ・ジェイ モデル 鈴木保奈美
「こういう仕事をしていると、飛行機や新幹線で移動するのが当たり前。日常茶飯事なんですね。ところが、私、仕事で初めて大阪まで飛行機に乗ったとき、すごく感激したんです。やっぱり周りの友達なんか見てても、学生にとっては飛行機に乗ったりするって結構大行事だったりするでしょ。友達と話していると、〝あー、そうだった〟って、普通の感覚に戻るの。それって大切ですよね」

素顔は最近ようやくお化粧にも目ざめ、通学と仕事で口紅の色も使い分けるように。