Can Can雑誌 1991年6月
今月の人物
クローズアップ 唐沢寿明 からさわとしあき
野球チームを結成したばかりの唐沢さん。
小学校時代はリトン・リーグに入っていたほどの野球好きです。
今、最も注目を集めている〝実力派若手男優NO 1〟と言えば…そう、この人!〝唐沢寿明さん〟です。
舞台、テレビ、映画と、各方面で活躍中の彼ですが、〝実力派〟と言われるゆえんは、舞台で鍛えた歌と踊りと演技力が、アイドル系の役者さんとは一線を画しています。
そこで、まずは今日に至る唐沢さんのフェーム・ストーリーを聞いてみました。
「高校のとき、柴田恭兵さんが好きで、よく『東京キッドブラザース』の芝居を見にいったんですよ。いつも前のほうで見てたんだけど、ツバが飛んできたり、汗が飛んできたり……
〝すごいパワーだな〟って、当時はビックリしましたね。で、『東京キッドブラザース』のオーディションを一回受けたんですが、そのときは落ちました(笑)」
その後、劇団(劇団名は残念ながら秘密とか)を結成。
斉藤由貴さんとは、3度目の共演になります。ボケとツッコミの名コンビです。(『おいしい結婚』より)

「劇団っていうと聞こえがいいけど、素人に少し毛が生えたような感じだったな。〝やろうぜ〟って言って、とりあえず集まったのが3人で、あとのメンバーは毎回ほかから引っぱってくるシステム。そのほうがモメなくていいんだ。脚本家も演出家もみんな卵だらけだよね。まして役者の卵なんて輪をかけて多いから〝オレのセリフが少ない〟とか文句言うヤツが必ずいるんですよ。そこを統一していかなければいけないしね。自分らでケチットつくって、ゲリラ的に売りさばいて稽古はガレージ、公演場所は小劇場なんてものじゃなく、ライブハウスみたいなところ。そんな活動が2年間続いたかナ」
映画が好きになったのは中学から高校にかけて。「デートで見まくってました」とか。

それでも、第一回目の公演から黒字で、最終公演では劇団のオリジナルTシャツが完売、と言いますから、たいしたもの。
「結局、自分で劇団やるのがいちばんてっとり早かったというのが本音かナ。オーディション行けば落ちるし、テレビなんか出られるわけないし、劇場のある劇団は納入金が高くて入れなかったし。自分たちで何かやってれば、いつかは誰かが目をつけてくれるかもしれない、と。結果的には誰にもスカウトされなかったけど…(笑)」

そして、メジャー・デビューのきっかけとなったのが、博品館劇場の『ボーイズレビュー・ステイゴールド』のオーディション。
「友達に〝受けないか〟って誘われまして、そのときは断ったんです。〝オレ踊れないし、歌えないからヤダ、恥かきたくないから〟と──。ところが、とにかく行くだけ行ってみることになり…なぜか受かっちゃった」
それから本番幕開けまでの4か月間、ダンスの猛特訓が始まり、初舞台にもかかわらず、達者な役者ぶりで注目を集めました。

「博品館劇場は今思うと小さいほうなんですが、当時は大劇場に見えましたね」というわけで、1987年のデビュー以降は順調に人気上昇。
端正なマスク、さわやかな笑顔、でも気になる鋭い瞳。それは彼ひ根づくハングリー精神の証と言えそうです。