
ジェイ・ジェイ雑誌1989年6月号
クローズアップ 田中美佐子 好感の研究
1959年島根生まれ 1981年TBS テレビ「想い出づくり」でデビュー。新人ながら強烈な存在感が評判となる。映画デビュー作の「ダイヤモンドは傷つかない」でも日本アカデミー賞新人賞を受賞。以後、テレビ、映画で幅広く活躍。
性別を問わず、誰からも人気のある人。あなたのまわりにもきっといるはずです。田中美佐子さんはその典型的なタイプ。意外に無器用で、でも自分の道はしっかり歩いていく、そんな人柄が好感を持たれるのでしょう。ライフポリシーの参考になりますね。

私、中学2年まで、島根県の隠岐の島で育ったんです。その頃の生活って、いま振り返ってみると、もう想像もつかないくらい(笑)。島ではどの家も畑を持ってましたから、私も朝、目が覚めると畑にイチゴをつみに行ったり、クワを入れてみたり、いきなり水着を着てうみに泳ぎに行ったり。子供の頃から、自然の中で遊びをおぼえて自然と共に生活してましたから、オモチャもいらなかった、っていう毎日でしたね。
隠岐の島以外は、海外っていうイメージさえ持っていて、島の生活も気に入ってたし、きっと私は一生この島で暮らすんだろうな、っていう気持ちも強かったんです。でも、とても矛盾してるんですけど、その反面、私は将来芸能界で仕事をする、っていうことも子供のときから確信してたんです。それこそ、東京なんて一度も行ったことはなかったし、芸能界のイメージも、まったくわからなかった。でも、自分は絶対そこで生きていくんだと思ってましたから、他の生き方については、ほんの少しも考えてなかったんですよ。

いま、思えばこわいもの知らずですよね(笑)。
でも、それしか信じてなかったから、逆に不安はありませんでしたね。短大を卒業してデビューするまでに、いろいろなアルバイトをして過ごしてましたけど、そのままも迷いは全然なかったんです。
島で育ったせいかもしれませんけど、もともと流行とか、世の中の風潮には影響を受けない性格です。何かを決めるときは、すべて自分の判断で決めますし、自分が一度決めたことは最後までやり抜かないと気が済まないほうですね。あまり他人には言いませんけど、
〝努力する〟とか〝一生懸命〟って言葉が好きだし、何に対しても、ひとつひとつ自分自身でキチンと納得して答えを出していかないと、前に進んで行けないタイプなんですね。自分がいいと思ったこと、これだけは自分の人生の中で変えたくない、と思ったことは、いつまでも大切にしていきたいんです。

多分、無器用なんでしょうね。その場のノリで、まわりに合わせて軽く流す、ってことがどうしてもできない。それは仕事だけでなく、恋愛の面でもそうですね。一度、本気で好きになった男性に対しては、多少イヤな面が見えてきても、できるだけ長く続けようと努力しますけど、遊びの感覚で、手軽なボーイフレンドを作るなんてことは、まったくできない。だいたい、ボーイフレンドという存在自体が、私はゼロです(笑)東京で11年間、一人暮らしをしてますけど、男の人は絶対自分の部屋にいれない!って決めてるし。器用じゃないから、必要以上に傷ついたことも多かったし、目的地にやってくるまで人より時間もかかったけど、でも、いまの自分はとても好き。できれば、29歳のこの気分のまま一生過ごしていきたいと思うほど、いま、やっといちばん自分らしい状態になれたみたいなんです。

アクティブ ●ファッションは、カジュアルが基本
普段は、ほとんどパンツにローファー。ハイヒールをはくと、自分らしい気持ちでいられないから、めつたにはかない、という美佐子さん。
ナチュラル●自然と触れ合うを大切にしたい
島での生活とは一転して〝東京はやっぱり夜が中心の街。この都会で、ムリに早寝早起きしても意味がない〞と語る美佐子さん。でもそのかわり、一年に何度かは故郷に帰ったり、大自然の中に旅したりして、自然と触れ合う時間を大切にしています。〝ワーッと自然が広がったところへ行くとわとにかく一睡もしなくても平気なくらい、その場所に夢中になって、無邪気になれますね。〞。本当に心からホッとできるのは、やはり自然の中にいる時だろう。

オン マイ ウェイ ●流行には絶対左右されない
今年流行っているフレアー・パンツも〝好きだったから〞と、4~5年前から愛用していたそうです。〝どんなにははやっていても、ジーンズは好きじゃないからはかないし、自分が好きで、ラクなものをに身につけていれば、流行なんて気にならない〞。ライフ・スタイルでも、いつも自分らしくマイ・ペースでやっていくのが美佐子さん流です。

スポーツ●スポーツ、子供の頃に戻れる感覚が嬉しい
最近、美佐子さんがいちばんお金をつぎ込んだのがスキー。今年の1月に始めたのに、ナイター2時間で13本滑るというまでの集中練習で、すでにパラレルをクリア。その他、ハーフ47~53のゴルフをはじめ、テニス、水泳と、得意なスポーツは数知れず。ひとつのスポーツを始めると、自称でいじっぱりで、スポ根大好きなので、つい徹底して集中してしまう。それに何よりも、〝スポーツをしていると、子供の頃に戻れるうれしい〞そう。

「私って意外と人見知りなので、リハーサル室とかでも一人でいるほうが多いんです。ドラマの共演者の方々とも、あまりお話しすることがないくらい。でも、美佐子さんは、そんな私にごく自然に話しかけてきてくださいって、ホントに数少ない〝打ちとけたお友達〟になってくれた方です。私の方が10歳も年下なのに、そんなことは、まったく気にならない、気持ちのとても若い人。私の使っているカリタのファンデーションを見て、〝わっ、それいいね、私も使おう〟なんて、すぐ買ってくるあたりも、いかにも美佐子さんらしく、気取りがなくてとっても好きですね。」