ジェイ・ジェイ雑誌1985年10月号
クローズアップ  松任谷由実
歌詞やメロディから感じるイメージがどんどん
ふくらんで、いつの間にか自分の体験や考えと重なってくる──ユーミンが送ってくれるメッセージはいつも新鮮。いつまでも18才のみずみずしい感性を失わない、魔法の鏡をもっているのかもしれません。9月には新曲「メトロポリタンの片隅で」も登場。また夢中にさせてくれそうです。
「元気イ、いかがあ~」
「元気は、いかがかなあ」
宇宙のどこかに、こんな〝元気〟を人々に売り歩く〝元気売りの少女〟がいたとしたら。
この少女、人間という地球の生物のオーラを吸い、そこから得たエネルギーで全身をキラキラさせながら、今度はお返しに〝元気〟を売り歩くのである。
彼女の名は───宇宙バンパイア。そして、またの名をユーミンという。
「いつも元気ですねぇって、よく人に言われるんですよね。私ね、すぐ人のエネルギーを吸いとっちゃうんですよ。宇宙バンパイアというか。でも、いただいた分は、ちゃんと利子つけてお返ししますからね」
そういえば、ユーミンの歌には、時間、空間を越えてタイム・トリップし、その間に心がリフレッシュされる、不思議な力がある。
「時候、天候というのは、私の詞に不可欠なものですね。ただ、こうして座っていても自然現象っていいなと思うし、風、雨、晴天、それぞれに好きですからね。耳にフィルターがかかったような感じになる、台風のまえも好きですしね。いってみれば、こうした自然の素晴らしさをいいたいがために、ラブソングを書いているようなものですもの」

それも、わざわざ自然を求めて海、山へ出かけていくのではなく、都会で垣間見る〝自然〟にこだわる。青山・草月会館のガラス張りビルを染める夏の照り返しや夕焼け、あるいは六本木・霞町交差点の立体交差を包む夜更けの霧を、この上なく美しいと語る。
「私、自分を縄文人だと思ってるんです。イギリスのウエールズ地方へ2度行ったんですが、英語がそれほど完璧というわけでもないのに、ケルト人の人と話すと心がわかってしまうんです。かつて、まったく同じ宗教だったんじゃないかと思いますね。自然崇拝という言葉は、キリスト教が出てきて差別用語みたいになってしまったけれど、私は木にも精霊ってあると思うんです。もちろん、家具も、ビニールだって話をしてますよ。だから、自分の周りにあるものは、みんな可愛がってあげたいなと思うんです
自然、宇宙の話になると、どうもユーミンの心は体をおいてきぼりに、フワフワと漂い始めるようなのだ。
「自分でいうのもおかしいけれど、感受性の爆弾ですから、私の場合は。つい最近、モロッコへ行ったんですが、磁石が狂うというか、日本にいる間は宇宙というものを言葉で考えていたのが、モロッコには宇宙を考えなくてもいいほど、そこに宇宙があったし、本当の意味で自分が裸になれましたね」
ミセス〝宇宙バンパイア〟も、昨年30才の境界線を越えた。仕事として音楽とかかわり始めて、すでに17年。
「いちおう、14才から作曲して仕事してましあから、自分で考えても何年子供やってたんだろうと思うくらい。14、15才のころには夜ぬけして六本木へ遊びに行って、ただただ好奇心で人を眺めてましたね。それで、そのまま朝、学校へ行くんです。でも、高校時代、将来は絵と音楽の両方やろうと決めてからは、どんなに誘いの電話がかかってきても出ていかないんです。全部自分で決め、決めると絶対に曲げないんだから、いま考えば可愛くない娘ですよ」
恵まれた家庭環境に甘んじることなく、自立心旺盛で、好奇心の強い少女の顔が浮かんでくる。30才過ぎた現在もその当時の少女が、そのまま息づいているところが素敵だ。
「これまでずいぶん洋服にお金をかけたけれど、最近は体にお金がかかってきたから、何を着ててもいいという感じ。それがただの白いシャツでもね」
30代の女の台詞をサラリといってのけた。
アルバム ひこうき雲/荒井由美
1973年11月発売。
それは、再発売1980年アルバムで、私は3年後、レコード店で、アルバムを2000円買いました。
「ひこうき雲」デビュー
荒井由美 1954年1月19日 生まれ
山羊座(性格的には水瓶座)
趣味 音楽 日本画