夫と焼き肉に行った。
煙がすべて夫のほうへ流れていた。
目が痛い、ゆっくり食べられないと、夫はどんどん不機嫌になる。
店員さんに伝えると
「換気、これが限界です」と申し訳なさそうに言われた。
明らかに、私たちの席だけ換気が悪かった。
見渡すととなりの席はあいていた。
私は夫に隣の席に変えてもらうか、
私と席を変わるか、
私の横に座るかを提案した。
食事中だったけど少しの移動で、この時間が楽になるなら、その方がいいと思ったから。
でも夫は
「もう肉を焼いているから我慢する」
と言った。
その直後、店員さんが私たちに再度謝ると
夫は
「ゆっくり食べれない」
と捨て台詞のように言った。
店員さんが去ったあと夫は
「朝○人のくせに」
と言った。
一瞬で、私は胸が冷えた。
恥ずかしかった。
情けなかった。
その場に一緒にいる自分まで、同じ人間だと思われる気がして、
一気に帰りたくなった。
確かに店員さんは日本人ではなかった。
でも、だから何なのだろう。
お店の方には聞かれなかったけれど
隣の席の人には聞こえたと思う。
私は食欲を失い、
「そんな言い方やめて」
とだけ伝えた。
そのあとは無言で食事をした。
美味しくなかった。
最悪だった。
帰りの車の中で、私は夫に伝えた。
人種差別みたいな言葉は二度と言わないでほしいこと。
席を変えるのはよくあることで
少しの時間で、その後の食事が楽しくなったかもしれないこと。
自分で「我慢する」と言ったなら、最後まで我慢すべきだということ。
その夜、情けなさと恥ずかしさで眠れなかった。
そして思う。
やっぱり無理だ、と。この人と一緒にいると、
自分の大事にしているものが、少しずつ削れていく。
人間、やはり簡単には変われない。
夫には期待できない。