30年前 新婚だった頃のこと


母の日だから お義母さんに

カーネーションを買っていこうよ!

と ダンナに提案した


ダンナは 母親の手料理が大好きすぎて

週末になれば 

車で10分の実家に連れて行かれてた



花屋さんに寄って! と言ったら

ダンナが ホームセンターでよくね?

と 近くのホムセンに寄った



ほんとはゴージャスな花束を

渡したかったのに

ダンナは かごに入った土付きの苗を

買おうと言う

しかも ダンナが選んだのは

安いプラスチックの籠に入っていて

数本の小さい花がついている

みすぼらしい物だった 

そんなの 私だっていらないわ


私は そんなの嫌だと言ったけど

これがいい、と きかなかったので

それを買っていった




実家で客間にいる時に渡したら

変な顔をされた

お礼は言われなかった

無言だった



義母は台所に消えたけど

手のひらほどの花のかごは 

部屋の隅に 置き去りにされた

私もひとりで置き去り

ダンナは別室で弟と遊んでいた




暫くして 義母が入ってきて

これ、○○からもらったの

すっごく素敵でしょう

わぁ ほら 素敵

とか言いながら、花束を花瓶に刺した

〇〇は ダンナのいとこの名前

義母からしたら 妹の息子


何度も何度も きれいだと大きな声で

ひとりで言っていた


だーかーらー

高い花を買えばよかったんだよ😤

どんなものでも嬉しいわ、なんていう

可愛い人じゃないだろ?


わざとらしく

人が持っていったのは放りだして

甥っ子からもらった

そんなに素敵でもない花束を

褒め続けている 超絶嫌味なババア


あんたの母親は そういう人だ!


母親とその料理が好きすぎる男は

だらしなく 舌をチャッチャッと

鳴らしながら

ごちそうを食べ 酒を飲み

義父とくだらない話で盛り上がった


私は 義父の吐くタバコの煙を

なるべく吸わないようにしながら

食べたくない料理を飲み込み

涙も飲み込んで 耐えていた

洋間に座布団一枚の上に

何時間でも正座させられていた



帰る時に 義母は財布から万札を出して

ほらっ、花 買ったんでしょ?

という 訳わからんセリフを吐いて

私の手のひらの中に

札一枚を滑り込ませた



子どもたちには

花屋が儲けているだけだから

カーネーションはくれないでねと

言ってある

だから毎年 母の日は何もしてもらわない

カーネーション、大キライ!!