発酵食品が注目されるようになり、麹の作り方を紹介する本やレシピも増えています。しかし、私たちが普段使っている「麹」という漢字には、実は二つの表記があることをご存じでしょうか。

一般的に使われている「麹」は、中国から奈良時代に伝わった漢字です。中国では麦を使って麹を作るため、「麦」を使った字になっています。

一方、日本には「糀」という字があります。これは「米」に「花」と書く国字、つまり日本で作られた和製漢字です。江戸時代末期から明治時代にかけて生まれたといわれています。

なぜ「米に花」なのでしょうか。それは、蒸した米に麹菌が繁殖すると、白い菌糸がふわふわと広がり、まるで花が咲いたように見えるからです。この美しい様子を表現したのが「糀」という文字なのです。

日本では古くから、酒や味噌などを作る際に米麹が使われてきました。本来、日本の発酵文化を表すなら「糀」の方が実情に合った文字ともいえます。しかし現在は、「米麹」であっても中国由来の「麹」を使うのが一般的になっています。

発酵学者の 小泉武夫 先生は、こうした国字と漢字の違いに注目し、日本の文化や歴史を漢字から学ぶことの面白さを語っています。しかし、国字と漢字の違いを研究する人は決して多くありません。

私はこれから、「麹」ではなく「糀」を積極的に使っていきたいと思います。文字には文化が宿っています。「米に花」と書く糀には、日本の発酵文化の美しさと、日本人の感性が込められているように感じるからです。