重松清、という作家が大好きだ。


出会いは簡単。


日本から本を送って貰う本を選ぶ為に、ネットサーフィン波 をしている際に出会った。

忘却曲線を慎重に辿りつつ、記憶をどうにかこうにか引っ張り出して思い出すと、

最初に目を惹いた一冊は、「流星ワゴン」流れ星 だったと思う。

そこから、「ナイフ」手裏剣 やら「疾走」走る人 やらの表題作をみつけた。

レビューの多さや、評価の高さから、彼の本ならどれでもいいから、

手に入るだけ送ってもらったのだったと思う。

正直、特にこれは絶対、というものはなく、読めれば良かった。

届いた荷物の中、重松さんの本だけで5、6冊は送ってもらっていた気がする。

その中でも、最初に手にしたのが「卒業」だった。

それははっきり覚えている。


というのも、私が日本に本の発注をすると、母は最低でも3日をかけて私の為に本を探してくれる。

その間、買い集めた本の中の1,2冊は、母も目を通す機会が出来る。

せっかく買ったのだから、自分も読みたいと思うのは当たり前。

荷物が届いた事を報告する為に日本に電話をした際に、

母から 「卒業」 を読んだ、と聞かされれば、読みたくもなる。

しかも、本に関わらず、全ての芸術に対して厳しい目を持っている母曰く、


「泣いちゃった。」


読まないわけにいかない。

今まで、どんなに私が良い本だ、感動した、と告げては読ませても


「若い子向けね。」


とか、


「文章が幼稚ね。」


であしらわれていたのが、「泣いた」と言うのだから。


読んで解った。

時代が、母、なのだ。

母の世代なのだ。

きっと、母は自分をそれぞれの主人公に重ね合わせて泣いたのだろう。

それを思って、私は泣いた。


「まゆみのマーチ」では、主人公の母親に、自分の母を重ねた。

どうしようもない娘で、いつも苦労をかけている自分がマユミに重なった。

何も出来ない、それでも何かをしてあげたい、そう思えば思うほど、

母の最期の時、私はこれから十分な程の親孝行をしてあげる事ができたとしても、

まだ何かあったはずだと後悔するような気がする。

幼い頃の記憶が蘇って、可愛いくらいに私を守ってくれていた母を思って、泣いた。


「仰げば尊し」が一番泣いたかもしれない。

厳格な父を持つ主人公の冷静な佇まいに、静かな悲しみと人に対する尊厳を感じた。

時期を近くして、私の父が定年退職をした。

その少し前、Smapのクサナギ君主演の「僕と彼女と彼女の生きる道」なるドラマを見ていた。

主人公の父親が管理職まで上り詰めるものの、定年間際、世代交代の為、窓際族に追いやられる。

職についていた時は、部下から慕われいたもの、降格と同時に、その人望も失う。

退職当日、時計の針が5時を射すと同時に席を立った父親に同僚、部下は小さな花束のみを渡す。


「花束、小さすぎたんじゃない?」


見てて、悲しかった。辛かった。

夜、主人公であるクサナギ君が父親に電話で「送別会?」と尋ねるものの、

実際の父親は、小さな花束をカウンターにのせ、一人酒。


以前の父親の栄光のみを信じるクサナギ君演じる主人公。

以前の父親の厳格さを知っているが故、

誰にもその死を悼んでもらえないと覚悟しているこの本の主人公。


色んな父親の姿が脳裏を駆け巡った。

自分の父親であるからこそ、信じたい。

かっこ良くいてほしい。

周りに認められる人間であってほしい。

誰からも愛された人間であってほしい。


最後のシーンでは、安堵のあまり涙が止まりませんでした。


予断ですが、私の父親は、幸い、大きな花束も貰って帰ってきたし、

ちゃんと送別会もして頂けたそうです。

本当にありがとうございました。





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