結局・・・仕事の時間まで待ってみたけど持ち主は現れず・・・行き場を失くしたカメラを持ったまま宿舎に戻ったんだ・・・
「ユチョ~ン早く早く!」
「あぁ・・・すぐ行く」
カメラをバッグにしまい込んでダッシュで車に乗り込んで外の景色を眺めながら・・・あんな素敵な写真を撮る人はどんな人なんだろう・・・なぜか写真を見た瞬間にカメラの持ち主は女性だと思ったんだ・・・
あの日から少しでも時間が出来るとカメラを持ってあの公園のあのベンチでひたすら待ってる自分がいて・・・俺にも良く分らなかった・・・なんでこんなにもまだ見た事のないカメラの持ち主に会いたいのか・・・
最近の日課は・・・ベンチでタバコをふかしながら・・・詩を書いたり、良い感じのメロディが浮かぶと口ずさんでは録音して宿舎に戻ってから楽譜に書きこむ事だった・・・
そんな時間は仕事に追われる俺には良かったのかもしれない・・・良い事も悪い事も忘れられて・・・まだ見ぬカメラの持ち主に会いたくて・・・どんな人かと想像しながら音や言葉を紡ぎだす事がまるで日記を書いてるような気分で楽しかったんだ・・・
あの日から数カ月経った頃だった・・・いつものように時間が出来てカメラを持っていつものベンチに行くと・・・先客がいて・・・高鳴る胸の鼓動がカメラの持ち主のような気がしてならなかったんだ・・・
「探し物は見つかりましたか?」
「いえ・・・え?」
そう・・・俺は気が付けばそんな言葉を掛けていた・・・何の確証もないのに・・・
「ふっ(笑)これでしょ?」
「あ・・・なんで・・・」
「ずっと持ってたから・・・」
「・・・え・・・でも・・・どうして・・・」
「なんとなく・・・中の写真を見てから持ち主をずっとここで待ってたから」
「・・・ありが・・・とぅぅっ・・・」
大きな目から涙の雫を流す女性はとても綺麗で・・・俺はこの時恋に落ちたんだ・・・いや・・・もう既に恋してたのかも知れないな・・・
彼女の横に座って・・・カメラを渡すと愛おしそうにカメラを抱きしめる仕草が可愛くて・・・待ってて良かったと心の底から思ったんだ・・・
続く・・・





