過去から解放された気がしたのは彼のお陰・・・彼が義母さんの話を聞いてくれたお陰で向きあう事が出来たんだと思う・・・
亡くなった彼が好きで・・・どうしようもなく寂しい夜は凍えそうなぐらいに寒くてお酒を飲んだ・・・もうこの世にはいないのに彼の温もりが欲しくて心が震える夜は・・・布団に包まって明け方まで眠れない日は少なくはなかった・・・
彼に逢うまでは・・・
あの日・・・店の前に立ってた彼に声をかけたのをきっかけに飲みに来てくれるようになって・・・冷え切った私の心にふんわりと暖かい温もりを与えてくれたのは彼だった・・・
でも・・・初めて逢った日から何故か彼は辛そうで・・・芸能人にはきっと私たちには分からない苦しみがあるんだろう・・・切なく苦しそうなオーラを放つ彼が・・・私と一緒に見えてしまってたのかもしれない・・・だけど・・彼は私とは違う・・・そう思っていた・・・あの日お義母さんに逢うまでは・・・
逢ってからは過去に縛られて逃げてても何も始まらない事を教えてくれた義母さんと彼に感謝しなきゃ・・・彼の言葉が今もずっと残ってる・・・生きてるんだから・・・前に進まなきゃ・・・
この時彼が何かと戦ってるんだ・・・そう思ったのかもしれない・・・
それからは毎日飲みに来てくれて・・・彼の笑顔に何度癒されたか分からない・・・それでも毎日亡くなった彼の遺影にお祈りを欠かさない私がいた・・・
初めて彼の車に乗ってお買い物をしてると・・・嬉しそうにはしゃぐ彼がまるで子供のようでキラキラ輝く笑顔が素敵だった・・・そんな彼に亡くなった彼の影を追ってしまう私は卑怯だよね・・・全く違うのに・・・似ても似つかない彼なのに・・・なんでだろう・・・
荷物を二人で運び彼の家に初めて入って・・・率直に思った事を口に出してしまって・・・彼をすごく切ない表情にしてしまって・・・申し訳なかったなぁ・・・
どういうつもりで彼が私を“遊びに来てよ”と誘ってるのか分からないけど・・・こんな広い部屋に一人で居たら寂しすぎるよね・・・そう思ってた・・・
クリスマスツリーを飾る彼は本当に無邪気な子供のようで男性に対して失礼だとは思うけど・・・可愛かったなぁ・・・点灯したツリーを眺めてると・・・まっすぐで熱い視線に気付いて彼の方を見ると綺麗な瞳で私を見てた・・・一瞬ドキッとして慌てちゃうよ・・・あんな真っ直ぐな視線で見つめられると心の奥までも覗かれちゃいそうで怖くなった私はその場を誤魔化す様に逃げた・・・
彼の作った料理は辛くてびっくりしたけど・・・繊細な味がした・・・テレビから流れる歌に動揺してると気付いたのは彼が泣いてるように見えたから・・・
彼の過去に何があったのか私は知らない・・・だけど・・・今テレビの中で歌ってるのはかつて彼が一緒に活動してた人達だったような・・・彼を苦しめてるのは何だろう・・・
気が付くと彼を抱きしめていて・・・腕の中で肩を震わせ声を押し殺して泣く彼に少し前の自分が重なる・・・彼もこうやって私を抱きしめてくれた・・・あの温もりで生きる勇気を前に進む勇気を貰ったんだ・・・
私にそれが出来るかどうかは分からないけど・・・こんなに切なく哀しく泣く彼の苦しみがとれる事を願わずにはいれなかった・・・
泣きつかれた彼をそっとテーブルに移してご馳走になったお礼に片付けをしてると彼が目覚めたようで・・・彼は小さな声で帰らないで・・・そう言った・・・
こんな夜は一人で居たくないよね・・・自分もそうだったもん・・・私で役に立つなら・・・何でもするよ・・・私を闇から救いだしてくれたのは彼だから・・・
彼が眠れるまでお酒に付き合い・・・家に戻ったのはもう朝だった・・・帰って遺影に手を合わせて・・・シャワーを浴びながら考えてた・・・彼が哀しみから解放される時は来るのだろうか・・・その為に私は何ができるだろうか・・・
続く・・・



