彼女を椅子に座らせて僕は家に帰る為に荷物を持って店を出ようとすると彼女が僕の服を引っ張って消え入りそうな声で
「・・行か・・・ないで・・・」
「・・・良いの?いても」
「・・・」
黙って首を傾けた彼女の冷たくなった手を握って彼女の横で彼女の手を握ってたんだ・・・
「七海ちゃん・・・貴女のせいじゃないのよ・・・あの子が亡くなったのは・・・あの子が弱かっただけなのよ・・・リハビリすれば何とかなったのかも知れないし・・・海外で手術する事も出来たと思うわ・・・だけど怪我と戦う事も出来なかったあの子が悪いのよ・・・だから七海ちゃんのせいじゃないのよ・・・だから自分を責めたりしないで欲しいの」
「・・・」
「もう3年よ・・・随分時間掛っちゃったけど・・・やっと見つけたわ・・・貴女にずっとこれが言いたくてね・・・もう良いのよ・・・苦しまなくても・・・新しい恋をしなさい・・・もうあの子の事は忘れなさい・・・」
「・・・」
「じゃなきゃ・・・おばさん・・・いつまでたっても楽になれないのよ・・・七海ちゃん・・・私も疲れたわ・・・心配ばかりするのも・・・お願いだから・・・幸せになって頂戴・・・」
「・・・お義母・・・さん・・・うぅっ」
「ごめんなさいね・・・遅くなっちゃって・・・ごめんね・・・こんなに長い間苦しめちゃって・・・おばさんの事許してくれるかしら・・・」
「・・・っっ・・・あぁぁぁっ」
声を出して泣く彼女を見るのは初めてで・・・そうか・・・声にならないぐらい・・・自分を追い詰めてたんだ・・・これで前に進めるかな・・・生きてる限り・・・前に進むしかないんだよな・・・僕は今の自分と重ね合わせてたのかも知れないな・・・
僕らも前に進まなきゃな・・・後悔・・・後悔してもやり直せない事もあるのか・・・そういう事だったんだ・・・彼女の言いたかった事・・・だけど感謝の気持ちも忘れてない・・・だからあの青い花だったんだ・・・
あの雨の日に見た花も・・・鮮やかな黄色のお花だったから・・・あそこで幸せの絶頂にいた彼女の人生が何もかも変わってしまったんだ・・・だから・・・絶望・・・だったのか・・・
その女性が店を出てから涙を流す彼女を抱きしめて肩をポンポン叩きながら僕はしばらくそんな事を考えてたんだ・・・僕と似てるんだ・・・だから僕はこの店が落ち着いたんだ・・・だから彼女が良かったんだ・・・
彼女の中にはまだ死んだ恋人が生きてるって言うのに・・・僕はこの時彼女を好きな事にやっと気付いたんだ・・・
続く・・・




