俺と静とお父さんで、いろんな観光地を巡った。
お父さんは目を細めて静を見つめては微笑んでいる。
静が珍しく はしゃいで走って前を行くと
俺と顔を見合わせて 嬉しそうに笑った。
そうやって何日か過ごし
明日は日本に帰国 という日。
今日こそは、と
俺は意を決して朝を迎えた。
キッチンに行くと、
静とお父さんが並んで朝食の準備をしていた。
「あ、秀斗 おはよう」
「秀斗さん おはよう」
「おはようございます」
「今日は二人でお出かけするんですよね」
「はあ・・・・」
「お弁当 作りますからね~♪」
「あの・・・・お父さん」
「はい?」
「お話したいことが・・・・」
「なんですか? あ、しずちゃん パンケーキとフルーツ運んで下さい」
「は~い」
「あの・・・・」
「まぁまぁ座って座って。 美味しい朝ごはんいっぱい食べましょ」
そうして朝食の準備が整い
皆が席に着いた。
猫のムーも側に寄ってきた。
「お父さん」
「・・・も~ なんですか秀斗さん。神妙な顔して」
「あの・・・・・大切なお話があるんです」
「はい?」
「秀斗?」
俺は席を立ち 姿勢を正してお願いした。
「息子さんを・・・・静さんを僕に下さい!」
額がテーブルに着くまで頭を下げた。
「お願いします!!」
暫し沈黙があった。
「・・・・秀斗」
「・・・・ほ」
「へ?」
「ほ・・・本日はお日柄もよく・・・・・」
「父さんっ 違うよっ」
「え? あっ あー、 えー、 うー」
「静さんを下さいっ お願いします!」
お父さんはしばらく黙っていた。
俺もずっと頭を下げていた。
するとお父さんは ふぅーっと大きく息を吐き出して静かに口を開いた。
「・・・・・静のこと、 どうか・・・・どうか宜しくお願いします」
「えっ」
「・・・・父さん」
「お父さん・・・・えっ(;゚Д゚)! ええ?」
。゚(T^T)゚。
顔を上げると お父さんの目から漫画みたいに
ダーっと涙が溢れ出ていたからギョッとした。
「(T_T) うぅぅ・・・思い出しました。
智子さんのお母さんに、 私も同じことをしたのでした」
「おばあちゃんに・・・・・」
「はい・・・・秀斗さん、 しずちゃんのこと大切にしてあげて下さい」
「・・・・はいっ (‐^▽^‐)」
二人でブンブン両手で握手を交わす。
「あっ そうだ!」
パチンと両手を合わせて 静が何かを思いついたように席を離れた。
「なんですか、あの子は。 今一番いい場面なのに (-""-;)」
「ほんとですよね~ (^_^;)」
「父さん、 これ・・・・・」
手に持ってきたのは・・・・
「これ・・・しずちゃん これ、婚姻届じゃないですか!」
「はい(*^_^*) 秀斗がくれたんです。
役所には受理してもらえないけど それでも僕にくれたんです」
「秀斗さん・・・・」
お父さんは片手を挙げて待っている。
「ヘイヘイヘーイ!о(ж>▽<)y ☆」
俺とお父さんは ハイタッチをした。
「やりますねっ秀斗さん!ヘ(゚∀゚*)ノ しずちゃんメロメロだったでしょ!」
「はい(-^□^-)」
静は照れ隠しに咳払いをする。
「ごほんっ あの・・・・それで証人の欄に秀斗のお兄さんに書いてもらったんです」
「ほうほう」
「それで・・・・もうひとりいるんです。
父さん、証人になってくれますか?」
「ええええ!? (((゜Д゜;))) 」
俺からもお願いした。
「い、いいのですか? 私で・・・・」
「お願いします」
すると猫のムーを抱き上げて、顔をうずめてオイオイ泣き出した。
「こんな大切なものに・・・・私が・・・・・」
「お父さんだからお願いしたいんです」
「うぅぅ秀斗さん・・・・いい事言いますね・・・・
さすがしずちゃんが選んだだけのことはありますね・・・・
お父さんは今 猛烈に感動しています」
そして上等な万年筆を取り出してきて 名前を書いてくれた。
Ruuskanen Juha
◇
俺と静は、二人でヘルシンキ大聖堂へと向かった。
キリスト教では俺たちの関係は認められない。
ならば神にではなく 静に誓おう。
俺たちは大聖堂の前の大階段に立った。
「静」
「ん?」
俺は懐から マリッジリングを取り出した。
「秀斗・・・・」
「いいか、よく聞けよ。 今から誓いの言葉を言うからな」
「え?」
静の手を取って まっすぐにその瞳を見つめた。
「私、矢沢秀斗は 一之瀬静を生涯の伴侶とし
病めるときも健やかなるときも富めるときも貧しき時も
君を敬い 君を労わり 君を愛することを 静に誓います」
「・・・・・秀斗」
「静は? 誓うかい?」
ポロポロと その綺麗な瞳から涙を零す静は
嬉しそうに微笑んで抱きついてきた。
「うん・・・・うん・・・・秀斗・・・誓います」
「じゃあ指輪の交換を」
俺たちは それぞれの左手薬指に指輪をはめた。
それを周りの大人たちが見ていたらしい。
祝福の拍手が沸き起こった。
静は女性に間違われているのかもしれないな。
でも そんな事はどうでもよかった。
見知らぬ人々に 俺たちの門出を祝福してもらって
俺たちは心がじーんと温かくなったのだった。
「静 愛してるよ」
「僕も・・・秀斗 愛してる。 これからもずっと」
「家族になろうな静。 いっぱい笑おうな」
涙を拭きながら 静が微笑む。
「誓いのキスを・・・・・」
「みんな見てるよ」
「かまわないさ」
「秀斗・・・・」
時が遡る。
15歳の、初めて静に会ったあのときから
ずっとずっとこうなることを夢に見てきた。
「・・・・・していい?」
「え?」
「この先ずっと 秀斗を独り占めしていい?」
俺は嬉しくて チュッと触れるだけのキスを何度も落とした。
「僕 アルチュール・ランボーの詩を思い出した」
「どんな?」
「帰ったらゆっくり教えてあげるね」
「ベッドの上で?」
「・・・(/ω\) うん」
「俺も静を独り占めするからな
」
二人で歩いていこう。
どんな道になろうとも。
静がいれば 俺は笑っていられる。
静がいれば なんでも乗り越えられる。
フィンランドの空の下 俺と静は永遠を誓った。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
L'eternite'
Elle est retrouve'e.
Quoi? - L'Eternite'.
C'est la mer alle'e
Avec le soleil.
“永遠”
見つかったぞ
何が? 永遠が
太陽と
融合した海が
~アルチュール・ランボー~
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
おしまい
お届け曲 河口恭吾 『桜』







